今の日本では、実質的に5~10月が夏といえるほど暑さが長期化。気象庁が今年4月に気温40度超を「酷暑日」と定義したことは、その深刻さを象徴している。こうした環境変化は、新たな食品市場機会をもたらす。
長引く夏を背景に、避暑と熱中症対策食品が急速に多様化し、トレンドに新しい風を吹き込んでいる。特に熱中症対策は、これまで塩飴が中心だったが、グミや炭酸飲料、凍らせるゼリー、嗜好(しこう)性の高いアイスクリームへと広がり、店頭を変えつつある中で、26年は「アイススラリー」と「凍らせ麺つゆ」という二つの新領域が市場をけん引する見通しだ。
新しい冷却体験
アイススラリーは、飲料と氷の中間のような半凍結状態が特徴で、体内深部温度を効率的に下げられる。大正製薬「リポビタンアイススラリー Sports」や大塚製薬「ポカリスエット アイススラリー」など、製薬メーカーが積極的に投入している点が特徴的だったが、この6月には全年代に支持される麦茶でも伊藤園が「健康ミネラルむぎ茶 アイス スラリー」を発売し、日常飲料の領域にまで広がりを見せる。
一方、新体験として凍らせて使う麺つゆも急増。〝氷点下ののど越し〟という新しい価値で、昨年に日本アクセスが「ぶっかけ氷つゆ」を投入し市場の芽が生まれた。
今年はさらに、味の素「氷みぞれつゆ」、キッコーマン食品「シャリっと冷やそうめん」、丸美屋食品工業「つけうま!氷点下そうめんつゆ」と主要メーカーも一気に参入、食卓に新たな夏の定番を提案する。シャリシャリとした氷状のつゆは涼やかな口当たりで、食欲が落ちる時期の頼もしい味方となる。
長い夏がもたらしたのは、〝凍らせること〟が価値になるトレンド。冷たさは味のバリエーションではなく、暑さに立ち向かうための機能価値として位置づけられつつある。飲料を凍らせて持ち歩く、つゆを凍らせて食感を変える、ゼリーを凍らせてデザート化するといったアレンジが広がり、メーカー側も「凍らせて食べる前提」の設計を強化する可能性は高い。
販売期間がカギに
一つ懸念があるとすれば、これら商品は夏季に販売が集中しやすい点だ。小売店は季節を先取りする傾向が強く、9月を過ぎると気温はまだ高くても店頭を秋冬仕様にするケースが多い。しかし夏が長期化する今、暑さ対策食品の販売期間を延長し、消費者が快適に夏を過ごすためのニーズを取りこぼさないことも重要なポイントだ。
(月刊「食品新製品トレンド」・武藤麻実子)
