絵画アーティストの堀米春寧さんは、2月22日に初のアートブック「I vvonder」(アイ・ワンダー)を出版しました。高校在学中に絵描きとして活動を始め、文化学園大学服装学部服装造形学科を卒業。0.05ミリの黒のペンで、命の流れと好奇心をテーマに描いています。21年から古着にハンドワークを施すリメイク作品の制作も開始。ファッションブランドとの協業、ミュージシャンの衣装、百貨店のウィンドーディスプレーや空間制作まで多岐にわたる表現に取り組んでいます。
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服を絵の土台に
小さい頃から絵を描くのが好きだった堀米さん。初めてのファッション関連の仕事は、ファッション雑誌の挿絵でした。高校生の時にインスタグラムに上げた絵を見た担当者から連絡があり、依頼されました。
転機は自分の絵を知ってもらいたい、見てもらいたい思いから、服を「土台」として捉えるようになったこと。「服という日常の中に絵があると、自然とポップに見えるからこそ、少しダークに受け取られがちな私の絵も気軽に楽しんでもらえるのではないか」と思ったそう。古着にペイントや刺繍した作品をインスタグラムに上げていると、ファッションブランドから声がかかりました。
これまでに「ピンクハウスポッシュ」やロンドンの「レンリ・スー」「ユウショウコバヤシ」などと協業し、テキスタイルデザインに絵を提供したこともあります。「一緒に作品を作る」感覚を大切にして、服のデザイン、素材や製法に合わせて描きます。刺繍で表現する場合は細かい線が再現できないため、太いペンを使って調整します。

ファッションの仕事では、着る人を守護するものを作り上げたいそうです。号泣しながら絵を描くことがあるくらいエモーショナルですが、服に向かう時は冷静に、俯瞰(ふかん)して見るようにしていると言います。自分の絵が服に載った時にどういう働きをするか、どういう気持ちになるかを意識しています。
次のステップへ
アートブックの出版を経て、「自分の平面の絵の時期に一区切りがついた」と感じた堀米さんは、次は服の時期にしようと考えています。今年2月の個展では、尾州の織物工場で作ったオリジナルテキスタイルを使用したインスタレーションを発表しました。服地を想定してデザインしたテキスタイルには、細かい絵のタッチがそのまま再現され、その技術力に感動したそうです。
制作を続ける中で支えになっているのは、幼少期に習っていたバレエへの憧れです。期待を誘うチケット、想像力をかき立てるパンフレット、美しい衣装と舞台に立つ表現者。そんなバレエの世界をディレクションしてみたいという夢を抱いているそうです。「人の好奇心をかき立てる存在になりたい」堀米さんの挑戦は続きます。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。