ケイミー DtoCブランドを百貨店に積極出店 OMO戦略で成長進める

2021/09/01 06:28 更新


試着便で顧客を拡大し、百貨店をOMO戦略の起点に

 日本製を特徴としたDtoC(メーカー直販)ブランド「ケイミー」をECで販売するケイミー(東京、毛見純子代表取締役)は、百貨店に積極的に出店している。新型コロナウイルス感染拡大による昨年の緊急事態宣言発出以降、東京・有楽町、横浜、京都、名古屋・栄、福岡、大阪・梅田の百貨店に出店しており、9月1日には高島屋日本橋店本館3階に12店目を開設する。

(小川敬)

 コロナ下でECでの購入が増え、アパレル業界でもオンライン化が加速している。同社は「今後、オンラインとオフラインを統合して、オンラインと店舗で相互送客するマーケティング施策が成長のカギとなる」と見て、早くからOMO(オンラインとオフラインの融合)戦略に取り組んでいる。百貨店への積極出店もその一環だ。

 同社は「挑戦する人を応援する」を使命に、自宅で洗えるストレッチ素材のスーツやワンピース、バッグ、ジュエリーなどを展開。消費者への直販をメインとするブランドとして11年に創業し、ECで成長してきた。忙しい女性のために伸縮性があり、しわになりにくい素材を使用し、長時間着ていても体が楽で、コーディネートしやすい〝時短性〟を特徴とする。靴やコート、バッグは〝ビーガン〟素材を使った商品開発を行っていることも特徴だ。

 「日本の物作りの精神と高い技術を後世に継承したい」との思いから、全て国内生産にこだわる。顧客へのオンライン調査の結果をもとに生産するアイテムや数量を決定、必要な数量だけ作ることで廃棄ゼロを目指す。在庫処分セールを行わず値下げロスを生産者に転嫁しないことで、生産者を守る。

 EC化率は現在40%超。百貨店への出店によるOMO施策でECと店舗の相互送客を強める狙いがある。今回、高島屋日本橋店に出店するのは、「ブランドのファンが最も多く住むエリアであり、居住地に近いエリアへの出店で、オンラインでは補いきれない体験や提案、サービスなどを店頭で迅速に提供できるメリットがあり、より顧客満足と利便性を高められる」と考えたから。

 11年のブランド始動時から、ECサイトで購入前に試せる「試着便」サービスを実施しているのも特徴の一つだ。試着便の返却が実店舗ででき、店舗とECの在庫データや販売データを統合することで迅速な対応を可能にした。顧客が多く住むエリアに実店舗があることでより利便性を高められる。

 ECサイトで注文した商品や試着便を実店舗で受け取ることができるBOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・インストア)という仕組みを採用、顧客の都合に合わせて店頭で商品の試着が可能になり、顧客の負担を軽減する。このほか、オンライン上で顧客の来店希望日や店舗、スタイリストの予約も可能で、顧客のニーズや悩みをスタイリストが解決・提案することで、店舗でしか体験できない付加価値を提供できる。

 高島屋がインスタライブやショートムービーなどデジタル施策に積極的に取り組んでいることも出店の決め手になった。また、大手百貨店の富裕顧客層はサステイナブル(持続可能)な消費スタイルを好む傾向が強く、創業当初からの「セールをしない」「廃棄しない」という企業ポリシーと合致すると考えた。

挑戦する人を応援するファッションを提供する毛見代表取締役

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