薄い革を重ね合わせて有機的なオブジェや器を制作するアーティスト、キム・ジュンスさんは、東京・西新橋で日本初の単独個展を開いた。レザーのオブジェや器など約20点を展示、販売した。
丁寧に磨いたベジタブルタンニンレザーを使い、厚みや微妙な色調の違いで皮革の風合いを引き出す。キムさんは22年ロエベ クラフトプライズのファイナリストに選出された注目株。韓国国内外だけでなく、イギリスやパリでも展示活動をしている。
今回の作品のテーマは「sense of forest」(森の感覚)。森の中を歩いた時に感じる心の安らぎを表現した。会場では鏡を湖に、オブジェを木に見立てて、自然の静けさを感じる空間で見せた。
スモールサイズで本体3万9000円から。オブジェなど大きいサイズは50万~73万円。長く使うほどにレザーのエイジングも楽しめる。
キムさんは韓国城南生まれ。16年ソウルの国民大学校卒業後、金属加工とジュエリーの美術学修士を取得した。当時は主に金属を扱っていたが、13年にイタリアのトスカーナ地方でベジタブルタンニンのレザーに出合い、感銘を受けて今の作風にたどり着いた。「革は命のそのもの。絶えた命に作品としての新たな命を吹き込みたい」という。
輸入卸、PR、営業代行を行うショールームセッション(東京)が今回の展示会をサポートした。3年前から、同社が運営するセレクト型ECサイト「エスケーパーズ」で作品を扱っている。「衣服と同じように生活の中の一部としてアートを楽しむ人が増えている」と上杉文弥社長。暮らしの中で使われる生活工芸ではなく、美術鑑賞用のアート作品の市場に期待を寄せている。他にも海外で活躍するクラフト作家3人と契約し、日本での個展開催や販売などのサポートをしている。
同社がファッションの分野で培ってきたPRのノウハウを活用し、作家の世界にマッチした展示や販売方法を提案していく。トゥモローランド渋谷店、ランドオブトゥモロー丸の内店、伊勢丹新宿本店などの有力店を中心に、買い取りで常設展示も行う。
「まだ日本ではクラフトかいわいはニッチなマーケット。まずは才能ある工芸作家を世の中に紹介していける仕組みを作りたい」と上杉社長は話す。