ドイツと言えば車である。
ドイツのことなど何も知らない人でさえ”ベンツの国”であることぐらいは知っている。個人的には、これまで車に興味を持つことなどなかった。東京以外で暮らす気もなかったため、必要ないと考え、免許さえも持っていない。
しかし、ヨーロッパの街中でよく見かける何とも美しいフォルムのクラシックカーに目を奪われることがあった。それは、美しい靴を見た時の感動に似てる。
最初はそれぐらいの興味でしかなかったのだが、取材で知り合ったファッションデザイナーがイタリアのミュージシャンから購入したBMWのクラシックカーに乗っているという話から、Hナンバーの存在を知り、とても興味を持ったのだ。
Hナンバーとは、ヒストリーナンバー(ヒストリック)の意味を持ち、製造から30年以上経っていて、大幅な改造がされていない車に付けられる特別なナンバーのこと。このナンバーの付けられた車は、税金や保険が優遇されるという。物を大事にするドイツならではのアイデアだ。
ファッションもヴィンテージ好き、ヨーロッパ建築も古ければ古いほど興奮するタイプである私は、車においてもすっかり”Hナンバー”の虜になったのだ。
エコ先進国でもあるドイツはエコカーやシンプルでコンパクトな車が流行っており、ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン以外の車を見かけることも多い。そのため、Hナンバーのクラシックカーは余計に目立つ存在となっている。
街中で見つける度に写真を撮りコレクションしてきた一部を紹介したい(専門的なことは全くの素人のため、デザインやカラーなどファッションと同じ感覚での説明になります)。
★メルセデス・ベンツ・W114(Mercedes Benz W114)1968年~1976年
私の勝手な意見ではあるけれど、ベンツのデザインはとても男性的だと思う。古いデザインになればなるほど角張っていて男らしい。
このW114はベンツにしてはコンパクトなサイズと縦目のデザインがステキ。クラシックカーにはなぜかグリーン系の色が多い気がするが、このクリームがかったマットなグリーンがとてもエレガント。
★メルセデス・ベンツ L319(Mercedes-Benz L319)1955年〜1967年
日本でも見かけるけれど、ベルリンでも車の移動式コーヒー屋をよく見かける。これはキャンピングカーを改造したとても珍しいタイプだと聞く。白と赤のバイカラーというのもベンツっぽくなくてPOPなカラーがかわいらしい。
フロントに”Coffee!”と描かれたロゴもかわいらしいけれど、実際にコーヒーを売っているかは不明。
★メルセデス・ベンツ LA710(Mercedes-Benz LA710)
ベルリン在住の友人が所持するキャンピングトラック。これで実際にヨーロッパ各地を旅しているのだから羨ましい。こちらもクリーミーなイエローカラーがとても映える。
世界のゲストハウスを紹介しているairbnbでレンタルもしているとのことなので、気になった方は是非。
★ランチア・フルヴィア(Lancia Fulvia)1963年〜1976年
イタリアのメーカー・ランチアが発明した人気モデル。フィアットの傘下に入る前の最後の純粋なランチアといわれている。
ベンツやプジョーのクラシックカーは見かけることが多いが、これは初めて見た上に、知らないメーカーだった。とにかくシャープなフォルムがとても美しく、まさにクラシック!といったダークなカラーが魅力的。
★プジョー・304ガブリオレ(Peugeot 304)1969年~1980年
フランスを代表するメーカー・プジョーによる70年代を象徴するモデル。デザインはイタリア最大のカロッツェリア、ピニンファニーナが手掛けている。
Hナンバーの存在を知ってから一番最初に発見したのがこの車だったのだが、ベルリンではプジョーの割合いが高く、同じモデルの色違いも数回見かけた。見た目も小さく、柔らかいフォルムが女性らしい。
★フィアット・124(Fiat 124)1966年〜1974年
イタリアのメーカー、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しているモデルとあって、目を引く美しいフォルム。デザインは先に紹介したガブリオレと同じピニンファニーナが手掛けている。
フェス会場へ向かう途中に発見したが、並びのどの車より美しく輝いていた。日本でオープンカーに乗るのは街の風景にマッチしないし、恥ずかしいと思っていたけれど、ヨーロッパの街並なら是非とも乗ってみたい。
靴や洋服のようにコレクションは出来ないけれど、写真に撮ってコレクションするのは無料である。なぜかベルリンの街で出会うのはドイツの国産車以外が多く、車もインターナショナル?と思うほどであるが、今後はBMWやポルシェのステキなHナンバーに出会えることを期待している。
(*上記説明の一部は、ファッションジャーナリストの増田海治郎氏に教えて頂いた解説をもとに自分で調べたものです。増田さん、ありがとうございました!! 現在、クラシックカー特集をやって下さる媒体様を募集中です)
宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。