地方にアバンギャルドを 10年目の「反転劇」《プラグマガジン編集長のローカル私論》

2026/09/18 10:59 更新NEW!


「リコール」27年春夏コレクション(楽天ファッション・ウィーク27年春夏から©JFWO)

 先日、楽天ファッション・ウィーク東京27年春夏で、岡山県出身のデザイナー土居哲也氏が手掛ける「リコール」の10周年ショーを見ました。テーマは「(re)code x (re)menmber」。シャツを上下逆さに用い、複数の衣服をつなぎ合わせるなど、衣服本来の構造や用途をずらすルックが随所に現れます。先輩、仲間、次世代との協業も含め、10年の歩みと、その先の飛躍を感じさせる素晴らしいランウェーでした。

【関連記事】地域性に寄りかからない 岡山発「20歳」の家具ブランド《プラグマガジン編集長のローカルトライブ!》

「誇る」前に「関わる」

 ここから思い至ったのが、地方にはもっと「アバンギャルド」が必要だということです。「実験的」「エキセントリック」「コンテンポラリー」と「前衛」は似て非なるもの。新しい素材や手法なら実験的、奇抜ならエキセントリック、時代の先端ならコンテンポラリー。

 しかし、それだけでアバンギャルドになるわけではありません。既存の枠組みの中で新しい答えを出すのではなく、「そもそも、それは本当にそうあるべきなのか」と、当然とされてきた前提そのものを問い直す。リコールが掲げた「反転劇」に感じたのも、まさにその姿勢でした。

岡山の「overlace」(オーバーレース)と協業したルック(楽天ファッション・ウィーク27年春夏から©JFWO)

 地方創生というと、伝統工芸や職人技、地場産業といったクラフトマンシップに光が当たりやすいもの。それらを守り、受け継ぐことは重要です。ただ、地域を未来へ動かすには、既存の価値を継承する力と同時に、これまでの前提を問い直し、新しい見方を提示する力が求められるのではないでしょうか。

 こうした前衛を地域から生み出していくには、地域側も傍観者ではいられません。以前から違和感があるのが、地元出身者が全国や世界で成功すると、「我がまちの誇り」として称揚することです。

 その土地の気候や風土、人との出会いが本人に影響した部分はあるでしょう。しかし、その成功は何より本人の努力によるもの。それを後から地域の誇りとして語るだけでは、言う側に主体性がありません。「その人がそこまで行くために、地域は何をしたのか」という視点が抜け落ちてはいないでしょうか。

 圧倒的な実績を残してから声を掛けるのではなく、その前から関係を結ぶ。同じ地域にルーツを持つことを接点に、商品を買う、仕事を依頼する、発表の機会を作る、誰かに紹介する。そうした関係があってこそ、地域も主体性を持って「我がまちの誇り」と言えるのだと思います。

デザイナーの土居氏

地元協業率を上げる

 例えば企業が制服を新しくするなら、地元出身のファッションデザイナーを選択肢に入れる。学校の制服や空間作り、商品開発でも同じです。岡山在住である必要はありません。地域の企業や行政、学校が、地元にルーツを持つクリエイターとどれだけ仕事でつながっているか。私はこれを、仮に「地元協業率」と呼びたいと思います。

 成功者を後から郷土の物語に組み込むのではなく、評価が定まり切る前からその存在に目を向け、仕事や協業の相手として考える。同じ地域にルーツを持つ者同士が互いの挑戦に関心を寄せ、必要な時には仕事でつながる。そんな関係の蓄積こそ、地域の財産になるはずです。

 クラフトマンシップを守りながら、アバンギャルドを受け入れ、育む。地域から羽ばたく人を後から「誇る」だけでなく、その過程に自ら関わる。私たちが掲げる「地方〝装〟生」には、そんな主体性が必要だと思っています。

 ※「ローカルトライブ」は今回から「ローカル私論」にタイトルを変更しました。

山本佑輔(やまもと・ゆうすけ) 04年に創刊した岡山県発のファッション・カルチャー誌『プラグマガジン』編集長。プラグナイトやオカヤマアワードといった地方発のイベントや企画もディレクションしている。24年度グッドデザイン賞で雑誌として史上初めての金賞(経済産業大臣賞)を受賞。通り名はYAMAMON(やまもん)。https://lit.link/yamamon


この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事