物作りの未来像とは② 「つながる工場」で生産性向上

2017/07/16 04:55 更新


《連載 物作りの未来像とは―工場のIoT・自動化》② 「つながる工場」で生産性向上 短納期のニーズにも対応

 工場のIoT(モノのインターネット)化や自動化は、紡績や織布など繊維の川上段階の工場にとって古くて新しいテーマだ。高度経済成長期を経て、いち早く国際競争にさらされてきた繊維メーカーは、これまでも各工場でファクトリーオートメーションやモニタリング管理などに取り組んできた。しかし、インターネットの発展やスマートフォンなどモバイル端末の普及は、生産と営業、生産と顧客を結び付ける可能性があるなど、また一段と工場のあり方を変えるかもしれない。

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◆工場を遠隔操作

 工場内の設備をネットワーク化してモニタリングするというシステムは80年代から存在するが、一段と進化を遂げている。「ボルテックス」精紡機や自動ワインダーを生産する繊維機械メーカー、村田機械が提案しているのは、インターネットを活用した遠隔管理システム「ムラテックスマートサポート」だ。稼働データ管理システムとして自動ワインダー向けの「ヴィジュアルマネージャー3」とボルテックス精紡機向けの「V―ラボ3」の販売を5月から始めている。精紡機などの各機器を無線でつなぐことで、タブレット上で機械の生産状況や保全状況を把握、発生したトラブルの種類と解決策などをその場で確認することもできる。機械についている液晶画面に外部からメッセージを送り、オペレーターに操作を指示したりすることも。トラブルの種類をデータとして蓄積して遠隔サポートも実現。これによりメンテナンスにかかる時間が短縮されるほか、ロス率も低減するなど実際に先行導入した海外工場で効果が表れているという。

 また、世界中の糸のデータを蓄積することで、生産した糸の品質に関する個別リポートの送付など、ビッグデータを活用したIoTならではの機能もある。主に省人化と安定生産に寄与するシステムであり、中国などアジアからの引き合いが強いが、今何をどれくらい作っているのかといったロットデータの確認もリアルタイムでできるため、短納期対応など営業と現場の連携にも使えそうだ。

◆AI活用に意欲

 IoT化への対応は、最近でもクラボウが生産を「見える化」するシステム投資に力を入れているなど、実際の製造現場でも始まりつつある。YKKも製造現場において、IoTの活用を推進している。世界の主要なファスナーの生産工場にある設備をネットワークに接続し、稼働状況がリアルタイムでわかるようになっている。また、生産管理に加え、各生産工程で起こる機械トラブルもフィードバック。設備の開発・生産を内製化していることから、その情報を次の機械の開発に生かし、生産性向上を狙う。今年4月に社長に就いた大谷裕明社長は「ファスナーを作る機械にAI(人工知能) を組み込む」と、更なる進化に意欲を見せる。その一環で4月、黒部事業所(富山県黒部市)内に「先進ロボットFA(ファクトリーオートメーション)センター」を新設。「ロボットメーカーやシステムインテグレーターなど外部の力も借り、研究していきたい」としている。

 短納期対応に向けてバーチャルサンプルなどの活用も進んでいる。丸井織物は、豊田自動織機と島精機製作所が開発したデザインシステム「APEX-T」をいち早く導入し、企画から本生産のリードタイム短縮に寄与している。デザインからテキスタイル生産までを一貫するシステムで、生地のバーチャルサンプルを作成し、サプライチェーンの各工程で確認ができる。比較的リードタイムの長い織物生産だが、こうしたシステム導入で、消費者ニーズへのクイックな対応に貢献している。

村田機械の「ムラテックスマートサポート」は昨年のITMAアジアでも関心を集めた


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