連載・型破り!マッシュスタイルラボ⑨

2014/12/22 13:10 更新


《広げる編・チーム力》アルバイトの悩みまで議論

第8話

 新店オープンの際、必ずする願掛けがある。販売スタッフ、営業、VMDら全員が集まり、掛け声と共にヤクルトで乾杯する。夜遅くまで準備にあけくれたメンバーに、笑顔があふれる。そこにブランドや職種の壁はない。

責めずに信じる

 マッシュの組織体制は、古典的だ。企画部、MD本部、営業部など、職種によって分かれてはいるが、ブランド事業部制をとっていない。企画から販促まで一貫性ある仕掛けが当たり前になり、ブランド事業部制に変える企業が増えているが、社長の近藤広幸は、「必要性を感じない」という。「分けるとブランド間のコミュニケーションが出来なくなる。例えば、プレスはプレス同士で悩みを相談したいはず」。

 同社はもともと友人知人のつながりからスタートし、創業当時からのメンバーも多い。「役員同士の仲がいいから、部を越えたコミュニケーションが自然に出来る」と執行役員企画部部長の楠神あさみもうなずく。「売り上げが下がった時、責められたことも責めたこともない。自分で気づいて反省した時に、相手がとるスタンスで信頼関係は築かれる。採用する時も、人間力を一番見ている。センスは後からついてきますから」と笑う。

決定権は店長 

新店オープンの前はブランドや職種関係なくみんなで乾杯する
新店オープンの前はブランドや職種関係なくみんなで乾杯する

 「大丈夫?」「賛成?」。全国店長会で、近藤は何度も店長らに確認する。独りよがりにならないよう、みんなで方向性を共有する。適正なサンプル数や納品数について、店長同士に議論させることもある。「決めたことは、1週間以内に必ず動く」と、執行役員営業1部部長の鈴木努もいう。

 この場では、店長の意見が絶対だ。「決定権は君たちにあるという姿勢を社長はいつも示してくれる」と、「スナイデル」ルミネ新宿ルミネ2店店長の竹内千裕もいう。販売員の声を確実にとらえ、即座に実行に移すことが会社の信頼につながる。近藤も「人が生き生きしていないとブランドはうまくいかない。アルバイトの悩みについて、会議を中断して話すことだってある」という。

 繊研新聞社が15年春卒業予定の全国ファッション専門学校生約1600人を対象に実施した「就職意識調査」で、「注目している企業」の1位にマッシュスタイルラボが浮上した。昨年まで5年連続首位だったファーストリテイリングに代わっての1位だ。同社のスタンスが社外にじわじわと伝わり、共感者を増やしている。社員がやりがいを持って働くことでブランドが輝き、意志のある人材が集まる。そんな好循環が生まれている。

=敬称略

第10話



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