大手コンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニーが、オンラインファッション業界メディア「ビジネス・オブ・ファッション」と組んでファッション業界のエグゼクティブを対象にした調査結果をまとめた「ザ・ステート・オブ・ファッション2026」を発表した。これに伴い、マッキンゼー&カンパニーが、概要を説明するウェビナーを行った。
経済的利益は微増
それによると、26年の経済的利益(企業の純粋な経済的付加価値)は微増と予測されている。成長率が高いのは中価格とディスカウントだ。実際「アバクロンビー&フィッチ」「アーバンアウトフィッターズ」「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」は好調が続いている。マッキンゼー&カンパニー・ミラノのグローバル・アパレル、ファッション&ラグジュアリー・リード部門のシニアパートナー、ジェンマ・ダリア氏は中価格ブランドの好調について「真剣にトランスフォーメーションに取り組み、経費を効率的に使いつつ、ブランドのレベルアップをした」と説明した。「コロナを乗り切れたのだから関税問題も対応可能」という機運もあるという。
ラグジュアリーも、26年は25年より少し良くなる模様だが、ブランド間のシェア争奪戦の激化が予想されている。ラグジュアリーの予測成長率は中国が4.2%と最も高く、アメリカは2.1%、ヨーロッパは1.4%とされている。
興味深いのは、一口にラグジュアリーと言っても、求められる要素が地域によって異なることだ。「より高い品質とクラフトマンシップ」は、アメリカでは求められるが、中国ではそうでもない。店でのより良いサービスはイギリスでは求められているが、中国とアメリカはそれほどではない。「よりクリエイティブで革新的なデザイン」「独占販売」は中国での需要が高いが、アメリカとイギリスでは重要度はそれほど高くない。ターゲットとする市場に合わせて戦略を練ることが必要だ。
ジュエリーに注目
商品カテゴリーはジュエリーが注目されている。長期的な投資価値があって、自分を表現し、自分への「ご褒美」になるとして買われている。ギフト用にも自分用にもジュエリーを買う人が増えていることから、ジュエリーに力を入れるブランドが増えている。
テクノロジーが搭載されたアイウェアも伸びていて、2030年までに300億ドル規模のカテゴリーになると見込まれている。
健康志向は依然強く、可処分所得が減っても心身の健康のためにお金を使う。消費者の10人中9人が自分と似た思考のコミュニティーに属することがブランドへの愛着を深めるとしていて、ブランドにとっては今まで以上にコミュニティー構築が重要になる。
AI(人工知能)に相談しながら買い物する人が増えていることから、AIをエージェントとした「エージェンティック・ショッピング」なる言葉も使われている。この動きにブランドがどう対応するかが課題だ。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)