《めてみみ》無数の「たっちゃん」

2021/10/27 06:24 更新


 私事だが、娘が幼いころ、川で遊ぶ子供たちを育てる「川の学校」に参加させたことがある。四国の吉野川流域を舞台に、何回かに分けて数日間キャンプする。スタッフの応援の下、子供たちが主体となって川遊びやキャンプファイヤーを楽しむイベントである。

 モンベル創業者の辰野勇氏は長年、川の学校の講師を務めた。同社のスタッフも含め、子供と一緒になって長い時間を過ごした。失礼ながら、娘は今でもアウトドア売り場に行くと、「これはたっちゃん(辰野氏)のところの商品」と指を差している。

 キャンプから帰宅後の報告を聞くたびに、うらやましかったのがキャンプに来るゲストの面々の話。校長でカヌーイストの野田知佑氏はもちろん、作家の椎名誠氏ら堂々たるメンバーである。ちょうど、吉野川の下流に可動堰(ぜき)を作ることの賛否を巡る「吉野川第十堰問題」が沸騰していたころで、川の学校に関わる面々も反対運動に力を注ぎ、最終的に住民投票による反対を勝ち取った。

 コロナ禍が大きなきっかけとなり、アウトドア、特にキャンプがブームになっている。入門時から、テントや様々な用具に徹底的にこだわる人も少なくない。自然環境を楽しめる場所が残ったことは日本の大きな財産。環境保護に尽力してきた無数の〝たっちゃん〟に改めて感謝したいものである。



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