「すべての人にアイラブユー」をコンセプトとした南大阪コレクション2023(南大阪コレクション実行委員会主催、大阪府岸和田市後援)が7月9日、岸和田市の岸和田グランドホールで開催された。イベントはトークショーと地元品物販が中心のマルシェフロアと、ファッションショーフロアの2フロアで開かれ、ファッションショーには約100人の観客が集まった。
(津田茂樹)
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社会課題もテーマに
同コレクションはアトリエ工房アンジュ代表の樋口久実さんが「多くの人とファッションを楽しみたい」と思い付き、小さなカフェで09年に開いたのが始まりだ。樋口さんは、服の知識やマナーを伝える「服育」にも取り組んでいる。回を重ねるごとに「ファッションで世界を笑顔にする」という樋口さんの理念に多くの共感が集まり、近年は社会課題をテーマとするブランドも参加し始めた。単にファッションを楽しむだけでなく、ファッションと社会の関わり方を投げかけるイベントにもなっている。
コロナ下での無観客開催などを経て14年目となる今回は、ピンクリボン大阪の協力で、医学・整容・心理社会的支援で外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減する「アピアランスケア」に焦点を当てた。マルシェに疑似乳房で乳がんのしこりを体験するコーナーを設け、ファッションショーには乳がんや甲状腺がんなどでの手術後の傷を隠し、ファッションも楽しめる「デコルテクチュール」が参加。「アンジェ」のショーではステージ4の卵巣がんから寛解したシニアモデルが登場し、会場から拍手が湧き起こった。
デコルテクチュールの参加は2回目。前回は無観客でのネット配信だったので、リアルショーは初めてとなった。古田朋子代表は「良い素材と縫製で胸元、首元をおしゃれにするアイテムを開発してきた。百貨店催事への出店を通じて、これらにがん患者のニーズがあることと、このアイテムが悩んでいる人を前向きにすることを知った」と話す。胸元・首元のアイテムと同生地のコートドレスを作ってショーに臨んだ。
身近に触れる機会を
今回取り上げた多様性は、アピアランスケアだけではない。ロボット・AI(人工知能)システムのHCIの配膳ロボット「べラボット」が衣装を付けてランウェーに登場した。プログラミングされたルートを同じ衣装のモデルとともに進んだ。
このほかLGBTQ(性的少数者)モデルの「関西アライモ・フィーチュアリング華央里」、大阪のシニア女性に根強い人気があるアニマル柄ファッションのブティック「なにわ小町」など合計7ブランドがショーに参加した。
樋口さんは「多様な人と触れることで、こうでなければいけないという偏見が薄れていく。ピンクリボン活動なども知ってはいるがどこか他人事になりがち。でも、身近に触れる機会があれば理解は深まり、共感も広がると思う。南大阪コレクションは悩みを抱える人に寄り添い、全ての人が自由にファッションを楽しむ未来を目指したい」と同コレクションの目的を熱い眼差しで語った。