まだ「オゥパラディ」の店舗が無かった11年3月。ルミネ新宿で初の催事をさせて頂くことになり、準備をしていました。ところが11日に東日本大震災が発生しました。
初日となった17日、「こんな時に香水を買って下さるお客様がいらっしゃるのか」と、不安な思いでオープン準備をしていたところ、近隣のショップさんは商品撤去作業を進め、開店10分前に電気を消してお帰りになりました。節電のため、いつもより暗い所がさらに暗くなり、一瞬ぼうぜんとしてスタッフと顔を見合わせました。でも、すぐに気持ちを切り替えて皆に伝えました。「こんな時に私たちにできることは、笑顔でお客様をお迎えすることだけ。いらして下さったお客様に笑顔でお帰り頂けるように、いつも以上の笑顔でお迎えしましょう!」と。
お客様第1号は、40代くらいの女性でした。「これ、面白いわね」と、1万円分ほども購入され、スーッと気持ちが楽になったのを覚えています。その後も、皆で精いっぱいの笑顔でお客様をお迎えし続けました。最初はちらほら足を止めて下さるだけだったのが、2週間の催事が終わる頃には行列ができることもあり、笑顔のあふれる場所になっていきました。「笑顔のちから」を感じた日々でした。ルミネ新宿には、その年の8月に初の常設店を出店し、現在も継続して営業させて頂いています。
残念ながら現在はまだコロナ禍にあり、世界では争いも続いています。こんな時だからこそ「笑顔のちから」を改めて思わずにはいられません。
(エストインターナショナル社長)
◇
「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。