《私のビジネス日記帳》問題解決の研究室 久保嘉男

2022/09/28 06:25 更新


 前回書いた通り、いわゆるファッション業界のシーズンサイクルからいったん距離を置き、新しい形で皆さんに洋服をお届けしたいと考えています。では何をするのか。もちろん、通常のコレクションは作る予定ですが、別の取り組みも始めたいと思っています。アメリカの学校の授業にもあった〝問題解決〟をテーマにした物作りです。

 例えば、既にありますがジャカードテープを編み込むことで外反母趾(ぼし)の人でも楽に履けるスニーカー。これなんかは問題を解決した結果、数百万足くらい売れて世の中を良くしている。今までもマスクにコードをつけたり、1枚の長方形からポンチョを作ったりとかやってきましたが、イメージはその延長。夏でも涼しいブラックフォーマルとか、まだまだ世の中の困り事はたくさんあるはず。問題解決って服屋の始まりちゃうんかなと思ってるぐらいですから。

 仕事場は研究室みたいにして、物作りに真摯(しんし)に取り組んでいる人たちを集めたい。実際に自分でやってみせて、彼らもそれを見てアレンジすればいい。今はパソコンでする仕事も多いですが、自分の手を動かしながら造形する。他産業でもコンピューター並みの仕事を手でやる職人ってまだまだ多いですが、あれってすごくないですか。機械に頼り過ぎると人間の能力が衰退していきそうで、自分はちょっと怖さを感じるんですよね。

 ただ、研究室の作業を四六時中ライブで公開しても面白いと思っているぐらいで、デジタル嫌いなわけではありません。大変そうですけど、これからやっていきたいことです。

(デザイナー)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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