《私のビジネス日記帳》国内フェアトレードの時代 生駒芳子

2023/08/23 06:25 更新


 フェアトレードというと、途上国=遠い国の人々の経済自立を支援するためのものと思われているが、最近では日本国内にもあてはまる状況があると言われ始めている。

 きっかけは、外国人技能実習生の労働状況の報道。低賃金労働、転職が自由にできないなどといった状況が知られ始めた。外国人収容所の中で女性が亡くなるというニュースも報じられ、足元でこのような非エシカルなことが起こっているとは!とショックを受けた人は少なくないはず。

 最近では、映画業界、出版業界、テレビ業界などで当たり前とされてきた過酷な労働環境も、是正すべきであるという動きが出てきているし、さらには社会的な保障がなされてこなかったフリーランスの活動についても、解決すべき課題として掲げられ始めている。

 そもそも、下請け企業への圧力については、近年政府も「下請Gメン」を派遣して、中小企業への下請け取引条件の改善を図り始めている。

 なぜ、アンフェアな取引が生じるかといえば、発注者側の利益を増やすために他ならない。利益最優先のために、結果としてこの国で後回しになっているのが、人権問題だ。日本は、高品質のものづくり力や繊細な表現力で、世界で高い評価を得ているが、その評価を持続可能にするためにも、今こそ国内でのエシカルでフェアな取引に向けて、産業全体が努力をしはじめなければならない。

(ファッション・アート・伝統工芸プロデューサー)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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