「アドエルム」は、「ヒーロー(アスリート)を支えたい」という僕の思いをきっかけに開発したテクノロジーです。色々な鉱物を使い分け、人体の生理反応を利用し、運動効率と休息効率を高めるための素材を作っています。
純粋無垢(むく)に、無我夢中で物作りを追求するところから始まりました。このテクノロジーを多くのアスリートに使ってもらえたら、その価値を分かち合えたらどんなに楽しいだろうか――と、開発はもちろん、その伝え方の工夫にも心血を注いできました。このプロセスが一番楽しかったですし、僕の物作りの根源です。
そのかいあってか、この数年は取引先を中心に応援してくれる人が増えてきました。みんなが褒めて、共感してくれて「いいテクノロジーだからもっと広げよう」って協力してくれています。
それはすごく幸せなことなんですけど、いつからか僕自身はワクワク感が減ってしまっていた。頭の片隅に「トレンドに寄せたらもっと売りやすくなる」とかマスマーケットを狙っちゃうようなやましい自分がいた。大切な根源を忘れて楽な流れに乗ろうとしていた自分に気付いたんです。
すばらしいテクノロジーが生まれても、それを量産するために原価を落とし、次第にみんなと同じようなことをして、どこにでもあるようなものになっていく。そんな方向へ2、3歩でも行きかけていました。そんな自分に早く気付けてよかった。あなたの根源は何ですか?
(アドエルムテクノロジー代表取締役会長)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。