《私のビジネス日記帳》事実と解釈 松下一英

2024/03/06 06:25 更新


 数年前から自分の担当部署で研修を行っています。内容は多岐にわたるのですが、肝となるのは「事実」と「解釈」を分ける点。この業界は、そこがあいまいなまま業務や事業が進んでいる気がするからです。

 例えば、「売れています」と言う販売員に「50万円ぐらい?」と聞くと「20万円です」との答え。TSIには50超のブランドがあり、経営に必要な売り上げや利益があります。そこからブランドに数字を下ろし、さらに店や個人に振り分ける。それが予算です。にもかかわらず、感覚で話しているようでは心もとない。人によって判断が分かれるのは事実ではありませんし、個々の解釈を認めて積み上げたら経営など成り立ちません。

 ブランドの価値は売り上げです。少なくとも上場企業なら認めざるを得ない。「売り上げ以外の価値がある」との説も理解しますが、赤字なのに「うちはこういうやり方だから」は許されないし、事業も存続出来ません。だから事実である数字ベースで考え、話し合うことを根づかせようと研修しているのです。

 例えば、「ナノ・ユニバース」はコロナ禍前から始め、リブランディングで一度休止しましたが、22年7月から再度取り組んでいます。1年以上やると様になり、悪いと言われながらも、それなりに業績は改善方向にあります。

 科学とまで言うのは大げさですが、ファッション業界も解釈でなく、事実ベースで運営する必要があります。もうからなければ楽しいことも出来ませんから。

(TSI事業本部ナレッジディレクター)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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