《私のビジネス日記帳》母子の居場所 光畑由佳

2024/04/10 06:25 更新


 のっけから他紙の記事の話で恐縮だが、先日、某紙の一面トップに弊社の取り組みが掲載された。国際女性デーに取材を受けた通信社の記事だが、思った以上の広がりで、海外メディアにも拡散している。内容は、私たちの服が、被災地の母子の防災のために使われているというものだ。

 私は、次女を産んだ26年前、電車の中で泣きやまない子に授乳をせざるを得ない体験をした。胸をはだけての授乳は、周囲の皆に見られているようで、顔を上げられなかった。こんな思いをしなくては、赤ちゃんと出かけることはできないのか。とはいえ、誰かに頼んで改善できるものでもない。そこで、誰もが授乳できる環境を手に入れられるようにしたいと考えたのが、「着られる授乳室」というコンセプトだ。きものを応用して、授乳しているとわからない服を開発した。次女が生後3カ月の時に起業し、今まで活動を続けてきた。

 今回の記事の中でも紹介されたのは防災担当の方の言葉だ。「被災地で性被害が起こるのは女性が一人になった時だ。光畑さんの作る服は、皆のいるところで授乳ができる。これが一番安全なんだ」。多くの人は、母子の居場所を分けることが安心安全だと考えている。分けないことが安全につながるという発想は、実は、私たちの働き方と通じるものだ。次回は私たちが進めてきた働き方を紹介する。

(モーハウス代表取締役)

「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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