「コロナ禍」の米小売業 商品を売りながら寄付 客と従業員の安全性に配慮も

2020/04/07 06:30 更新


 アメリカで、アーバンアウトフィッターズ、ギャップ、セフォラ、JCペニー、エバーレーンが大方の従業員を当面無給休暇扱いにすると発表した。一方、オンラインでなんとか春物を売りたいブランドから、セールのお知らせメールが多く舞い込む。カード支払い期限に猶予をもたせると告知するブランドもある。先物のオーダーをキャンセルしたり減らしたりしたい小売店とブランドの間で、厳しい攻防も繰り広げられている。

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 そうした中、商品を売りながら寄付をするアイデアを始めた新興ブランドがある。防水加工シューズに特化したオンライン販売専門靴メーカーの「ヴェシィ」(カナダ・バンクーバー)は、客に支払う金額を選ばせて、利益の一部を使ってマスクを寄付するキャンペーンを始めた。靴を買いたい客は、「靴だけを40%引きの80ドルで買う」「靴を30%引きで買ってマスク80枚寄付することで95ドル払う」「靴を定価で買ってマスク110枚を寄付することで135ドル払う」という3種類の中から選ぶ。ヴェシィは先週金曜日にこのキャンペーンを始め、3日間で30万点以上の医療用マスクをアメリカとカナダのヘルスケア団体を通じて寄付した。ヴェシィは反響が大きかったことから、キャンペーンを継続すると発表した。同社はこれに先立ち、千足以上の靴を医療従事者に寄付した。

 一方、ウォルマートは従業員の体温を出勤時に測り始めると発表した。すべてのロケーションに体温計を配布する準備をしていて、体制が整うのに最高3週間かかるとみている。体温が華氏100度(摂氏37.78度)以上であれば帰宅させ、熱が下がってから最低3日たたなければ職場復帰できない。その間は有給とする。マスクと手袋については、「CDC(米疾病対策センター)などは、通常仕事で必要としていない健康な人が着用することを勧めていないものの、着用したい人は着用できるように用意する」としている。

 小売店では客と従業員の安全性に気を遣う店が増えているが、客の目の届かないところでも安全が確保されなければ、最終的に客の信用を失う。ニューヨーク市内のスタテン島にあるアマゾンの倉庫では、複数の感染者が出たにもかかわらずアマゾンが閉鎖せず、そのために職場放棄を組織した従業員が解雇され、ニューヨーク市が調査に乗り出す1件が起きた。

 企業による寄付も続いている。カプリ・ホールディングス・リミテッドは、新型コロナウイルス対策支援に300万ドルを寄付すると発表した。内訳はマイケルコースが100万ドル、ヴェルサーチェとジミー・チュウが各50万ドルで、マイケル・コース氏とカプリ・ホールディングスのジョン・アイドルCEO(最高経営責任者)が計100万ドルを個人的に寄付する。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

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