12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。
前回、売り出したい商品は、広告とPOPを含む店頭のディスプレーを連動させてアピールすることを学びました。今日の麻紀は、そのPOPの奥深さにあらためて気づいたようです。
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麻紀は、数カ月前に大谷マネジャーからダメ出しをされてからというもの、POP(店頭広告)の作成に力を注いでいた。〝POPの文字が小さく、文字数が多すぎて読む気がしない、書いてある言葉が誰にでもわかるものではない〟などのダメ出しだ。
以前の麻紀はPOPについて深く考えたことがなく、置いておけば見てもらえるものだと思っていた。しかし実際には、POPはお客様の足を止め店内に引き込み、接客がなくても購入につなげることができる、重要なものだと感じるようになった。
大谷マネジャーは今日も売り場を見回り、ルクリアにやって来て麻紀に言った。
「この打ち出し方はとてもいいね。最近のPOPは以前と見違えるほど良くなったよ」
「ありがとうございます。先日買い物に行ったお店のまねをしてみたんです。トレンドをわかりやすく発信していたんですよ」
「良いと思ったことをすぐにまねできるとは素晴らしいよ」
ルクリアでは、大きなキャンペーンPOPで「〈今年トレンドのダンガリーシャツ〉洗練されたカジュアルなスタイルを演出。九分丈パンツと合わせれば、きれいめな印象に」という文を見てもらい、興味を持って近づいてきたお客様には、小さなサイズのプライスカードに「ダンガリーシャツ ワンウオッシュ加工 1万1000円」という情報を発信していた。
「このキャンペーンPOPは3メートル離れたお客様にアピールできていると思う。説明文の長さも文字の大きさもちょうどいい。そして30センチくらいまで近づいて来てくれた方に購入の後押しをする素材特性と価格をお知らせできている」
大谷マネジャーはさらに続けた。
「それぞれ何を切り口にして、何をアピールするかを整理する習慣が身についたかな?」
「はい。おかげさまで、文章を考える国語力も身についたと思います」(笑)
大谷マネジャーが麻紀に教えたことは、こうだ。
整理しないでPOPを作成すると、何を伝えたいのかよく分からないPOP、長々として読む気の起きないPOPになってしまう。テーマの切り口は、素材や機能、デザイン、トレンド、コーディネートなどが考えられる。
例えば、アイテムを切り口にした時のテーマは「シャツ」、素材を切り口にした時のテーマは「ダンガリー」、アピールしたいことは「ダンガリーのシャツ」などとなる。
「整理することで、伝えたい情報が明確になるからね」
「POP一つ作るにも、奥が深いですよね。こうして考えられたPOPは必ず売り上げに貢献するはずです!」
麻紀は、POPを作るためにかける時間を大切にしていこうと決めたのだった。
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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
(繊研新聞2013年の販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)