今年はリカバリーウェアを取り巻く話題の多い1年だった。相次ぐ新規参入や低価格品の発売、マスメディアやSNSなどでの活発な広告・宣伝といった動きが目立った。販路も広がって手に取りやすくなり、市場は一気に拡大した。
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大々的な広告・宣伝
さかのぼると22年10月、リカバリーウェアと呼ばれる商品を想定して厚生労働省が一般医療機器に新しいカテゴリー「家庭用遠赤外線血行促進用衣」を設けたことが市場として拡大するきっかけとなった。「疲労回復」「筋肉のこりなどの症状改善」を一般の広告でもうたえるようになり、著名人を起用した大々的な販促を仕掛ける企業が増えた。
当初はリカバリーウェアをはじめとする健康を切り口にした事業を行う企業が先行していたが、今では一般衣料品を扱うメーカーや小売業、寝具メーカー、出版社など幅広い。参入企業の多様化に伴い、販路も広がった。百貨店が中心だったが、各社の直営店(EC含む)や家電量販店、生活雑貨店、ドラッグストアなどでも販売されている。
価格帯の広がりも市場拡大の大きな要因だ。もともと上下セットで2万円以上だったのが4000円以下から3万円台まで広がった。とりわけ低価格帯のブランドは、リカバリーウェアの着用効果に対して懐疑的だった多くの層の〝お試し〟需要をつかんだと見られる。
48万枚の自主回収
リカバリーウェアは今年、新語・流行語大賞の候補30語にノミネートされたことでも話題になった。その直後、リカバリーウェア業界の問題を象徴するようなニュースも世間を騒がせた。それが有力企業として見られていた、りらいぶによる自主回収の発表だ。
同社の自主回収は24年8月に次いで2度目。前回は包装袋に製造番号表記がない状態で出荷していたとして約3万6000枚を回収。今回は血行促進用衣の定義に該当しない商品を製造販売していたことが理由で、約48万枚の大規模な回収の実施を決めた。原因は定義に対する認識が不十分だったこと。前回と比べて問題は重大で、製造販売業者としての責任は重い。
リカバリーウェア市場は健康を切り口とした商品分野だけに消費者の関心は高く、しばらく拡大が続くと見込まれる。有望市場と見られているが、医療機器である以上は薬機法に基づいて厳しく規制されていることも企業は十分に理解しないといけない。適切な開発・販売競争の上で、健全な市場が形成されていくことを期待したい。
(繊研新聞本紙25年12月12日付)
