メンズブランド「ノブユキマツイ」は「第5回東京ファッションアワード」(主催は東京都と繊維ファッション産学協議会)の受賞をきっかけに、海外での販路開拓に挑む。同アワードに選ばれたブランドは世界のマーケットで飛躍するためのサポートを受けられ、伊フィレンツェで今月開催されたピッティ・イマージネ・ウオモとパリ・ファッションウィーク会期中にパリ市内に開設される同事業の単独ショールーム「ショールーム・トーキョー」に参加した。
(大竹清臣)
基本は家族経営
デザイナーの松井信之氏はロンドンで6年間暮らし、大学でメンズウェアを専攻した後に若手デザイナーブランドで働き、有力メゾンのインターンも経験した。帰国後、15年秋冬物からノブユキマツイを立ち上げ、16年1月、東京の下町にアトリエを開設した。
これまでは国内で展示会を開催し、地方の個店などに卸し先を広げてきた。SNSなどでの発信を通じて香港やニューヨークのバイヤーからもオファーがあったという。今回の受賞を機に、当初から目標だった海外進出を目指す。「グローバルな舞台でより多くの人に見てもらい、モノ本位で判断してほしい」その結果として国内での認知向上にもつなげたいとしている。
松井氏は自らデザインからパターン、縫製までの全てを手仕事でこなしてきた。シルバーのボタンはジュエリー作家の妻、コーディネートするシューズは兄が製作を担うなど、欧州のメゾンのような家族経営が基本だ。「自分はあくまで作り手なので、伝えることはアトリエの思いを共有できる人と組みたい。PRや営業、ショーの演出などの役割を担ってもらえるチーム作りが理想形」という。テーラードジャケットなど一部アイテムのサンプルは、難解なデザインの意図や思いを工場と共有しながら作り上げる。
スローファッション
19年春夏は捨てられてしまうような石、メノウから発想したコレクション。「注目されない物でも、アートの技法を使い、集合・連鎖することで新たな価値が生まれる」と強調する。素材は、一般的なわたを中心に使い、パイピングなど服の裏の仕様を表側のデザインとして採用した。メノウを大胆にプリントしたアイテムもある。
「大量生産・消費型の洋服には疑問がある。スローファッションを意識した作り手でいたい」とアトリエをベースにした服作りを続ける。