パルの「ディスコート」 初の生活雑貨複合大型店が好調 きめ細かいアプローチでファン作り

2021/02/11 06:28 更新


 パルの「ディスコート」ららぽーと和泉店が、20年5月の増床リニューアルで、社内の生活雑貨ブランド「サリュ」を初めて複合し、売り上げを大幅に伸ばしている。ライフスタイル提案を充実してブランド最大の約500平方メートルの大型店開発に取り組んだもの。コロナ下の中、新規客の獲得に大きな効果を発揮した。店が大きくなっても、「それぞれのブランドやカテゴリーの魅力を、しっかりと伝える作業が大切」と仲谷昇店長。〝濃い〟店であり続けることを重視し、リピーター作りをさらに目指す。

(小畔能貴)

【関連記事】三越伊勢丹の接客アプリ 自宅で商品を見て販売員と会話

■ブランドの目線で導入

 ディスコートは、ヨーロピアンカジュアルを切り口に、レディスをはじめ、メンズと一部キッズ、服飾雑貨を展開するブランド。社内では、「コロニー2139」「チャオパニックティピー」とともに、大型ブランドに位置付けられ、大型店開発と売り上げ拡大を目指す。

 ブランドとして将来、売上高300億円を狙うため、雑貨を強化してライフスタイル提案を実現する必要があった。山田浩司ディスコートブランド長は、「雑貨を本格的に手掛けるには、アパレルと違うノウハウがいる」と、以前から交流のあった別事業部と相談。生活雑貨のサリュから商材をセレクトして導入することになった。

 ただ単にサリュを加えるのではなく、ディスコートで雑貨のバイヤーをしていた人材を、サリュの専任バイヤーとして配置。両ブランドのミスマッチ感が生まれないように、あくまでディスコート目線で生活雑貨を組み合わせることにも気をつけた。

「ディスコート」ららぽーと和泉店。左側に「サリュ」がある

■雑貨が売り上げの4割の日も

 ブランドとしてサリュを初導入したららぽーと和泉店は、改装前の約5倍となる面積に増床。売り場の中央にサリュを約100平方メートルで置き、その左はメンズ(服飾雑貨含む)、右はレディス(同)やキッズ、新設のドッググッズで固める店作りをした。

 改装後の効果はてきめん。20年5~11月の売り上げは前年比4倍ペースで、客数はそれ以上に伸びている。改装前まではアパレルを軸に集客していたが、改装後は生活雑貨がフックとなり、「これまでと異なる購買層の方を獲得できるようになった」(仲谷店長)。生活雑貨の売り上げ比率が、日によっては40%を占める場合もある。「コロナ禍で生活雑貨の需要が高まった中、ファッションの一部として雑貨を楽しんでもらえるようになった効果も大きい」

 同店では、独自で生活雑貨を具体的に使った提案をディスプレーし、部屋の模様替えを意欲的にアピールするなど、サリュの有効活用も進んでいる。提案が充実しているドライフラワーは、サリュ専任バイヤーがサリュの商材にあったものを見て可能性を感じ、独自の仕入れルートも開拓した。接客では、「生活雑貨がカテゴリーにあることで、接客の中でもごく自然に家の中のことまで気を回しながら提案できるようになった」と手応えを振り返る。

■日常にもっと寄り添う

 仲谷店長は、「大きくなると店はどうしても大味になってしまいがち。それは避けたい」、と店舗運営面でも工夫している。まず、レディスやメンズ、サリュをはじめとした六つのカテゴリーそれぞれに専任の担当者を配置。各担当者にスペシャリストとして持ち場を効果的に演出すること、商品の魅力を的確に伝える接客方法を練るなどの作業を任せた。

 一方で、店長と各担当者による全体ミーティングを行い、店全体の目標や課題の共有をはじめ、それらを実現・解決するためにどうすべきかといった話し合いも欠かさない。各カテゴリーでの接客における成功事例も積極的に聞き出し、参考になることを全体で共有するようにもしている。こうして、店の様々な魅力を十分に引き出すとともに、全体でまとまって相乗効果を発揮することを目指した。

 改装から半年強。週に何度も来店してくれるリピーターも生まれているが、「今はまだまだ新規客が多い状況。こうしたお客様にどれだけブランドや店の魅力を味わってもらえるかが大切」と仲谷店長は振り返る。「一人ひとりのお客様に対し、接客を通じてもっと日常に寄り添った提案を磨く」ことで、「ファンをもっと増やしたい」と考えている。

大型店だが連携してきめ細かい売り場作りを欠かさない(右が仲谷店長)

《メモ》ディスコート

 レディスブランドとしてスタートし、リラックス感のあるヨーロピアンカジュアルを、30代前半をターゲットに提案。店舗の大型化とともに、服飾雑貨やメンズ、キッズも加わった。立地に応じてこれらのカテゴリーを自在に組み合わせた店作りをしている。現在の店舗数は66店。

スタッフによるSNS発信も強化中

■成功モデル磨いて拡大へ

 ●山田浩司ディスコートブランド長


 ららぽーと和泉店の改装で、生活雑貨「サリュ」を複合したことで、アパレル以外の業種のお客様を取り込むことができましたが、これほどの入店増につながるとまでは想像していませんでした。最大の店舗ではありますが、全国の「ディスコート」の中で、頭一つ抜きん出た勢いで売れています。

 この好感触をもとに、20年10月にイオンモール岡崎店も複合型で出店をして、良い反応が返って来ています。イオンモール草津店など二つの既存店も、改装でサリュを導入しました。同様の改装計画は今年度(21年2月期)中にまだ複数あります。今後も大型店については複合型の出店や改装を重視したいです。

 ららぽーと和泉店はいわば複合型大型店のプロトタイプ。大型店戦略を軌道にのせるための多くのヒントをつかむことができました。ただ、まだ粗削りな部分もあるので検証を進め、もっと精度を上げたいです。例えばサリュを店の中央に配置してメンズ、レディスを分断するパターン以外に、メンズとレディスを隣接すればジェンダーレス需要が狙えるのかも知れません。

 ブランドとしては、主力のレディスをさらにレベルアップしたい考えもあります。ブランドの個性に磨きをかけ、コロナ禍でも消費意欲の高い若年層の取り込みも意識したいです。大型店の出店強化に比例して新規客の入店はさらに増えます。そんな中でも、従来と同じように接客力を重視した店作りを推進して他店との差別化も図ります。

(繊研新聞本紙20年12月23日付)

関連キーワード販売最前線



この記事に関連する記事