インフルエンサーを立てたDtoC(メーカー直販)ブランドを運営するピッキー(東京)は8月に新たに2ブランドを立ち上げ、既存ブランドとともに展示会を開いた。展示会の数日後には各ブランドのサイトで一般消費者が購入できる仕組みで、年内にもう1ブランドをリリースする。SNSの発信からECにつなげる〝ソーシャル・ネイティブ・ブランド〟作りを推進すると同時に、他社ブランドの支援およびアパレルブランドのM&A(企業の合併・買収)も進める。そのための資金も8月に調達した。
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今回発表したのはガールズバンド「サイレントサイレン」の黒坂優香子さんが手掛ける「ジュール・ドゥ ミュゲ」と、女優の齊藤英理さんがプロデュースする「1/18billion(ワン・エイティーン・ビリオン)」。両者とも、同社がブランド化する際の基準である洋服のストーリーを語れる「言葉力」と着こなしを含めた個性を持ったプロデューサーだ。
これまでのタレントや芸能人のブランドは、本人は広告塔の役割で、実際の洋服作りにコミットする時間も少なく、結局数シーズンで終わるケースが多かった。今回はコロナ禍で比較的時間が取りやすかったことに加え、タレントの活動範囲が制限された事務所にとってもブランドの商売に本気で取り組む意欲を引き出すことになった。「成功の確率は従前よりは高い」と鈴木昭広社長は話す。
すでに公開している瀬戸あゆみさんの「ディア・シスターフッド」も同時に開催。インスタライブなどオンラインと人数限定のリアル展で披露し、数日後から販売を始めた。ジュールは数日で1000万円以上売れるなど順調、1/18もまずまずという評価。8月は3ブランド合わせて約2300万円だったという。
「SNSを駆使した告知で、ここから秋の実売でどれだけ伸ばせるか」と鈴木社長。実売時期は売れ行きの初速をもとに追加で積み上げていく販売手法をとる。鈴木社長は元々はOEM(相手先ブランドによる生産)企業を経営しており、今でも一部仕事を受けている。
また同社は、ECに後れを取っている他社のブランド支援を始めており、10月1日にはその第1弾の展示会を開く。販売サイトの構築や SNS運用、コミュニティー形成やモデルのキャスティングなど全方位でサポートする。
8月にはサイバーエージェントキャピタルやセゾン・ベンチャーズなどから1億2000万円を調達。この資金をテコに、DtoCブランドの開発と他社ブランドの支援に加え、アパレルブランドのM&Aも積極的に進めていく考えだ。