馬具をルーツにバッグを設計・デザインする自然堂あぶかわは今春、アトリエのある長野県軽井沢町に、ショールーム兼店舗「自然堂プラットフォーム」を開いた。自社ブランド「ピエニ」「アー」をフルラインナップで扱う。屋外に乗馬のコースをしつらえ、衣食住遊の豊かさを消費者と共有していく。
(須田渉美)
本気のファン作り
しなの鉄道の信濃追分駅から徒歩10分ほどの立地で、都心から新幹線を乗り継いで遊びに行くことができる。13年に法人化して18年にピエニを立ち上げ、セレクトショップへの卸売りは徐々に伸びてきた。ただ、それだけでは、ブランドの本質や世界を伝えきれない。「創業20年を目指すなら、本気でファン作りに取り組まないと」とデザイナー兼社長のあぶかわ晫也さんは話す。店舗は金曜日と土曜日の営業で、ハンドメイドの焼き菓子も販売する。また、商談用のショールーム、コミュニケーションの空間など様々な用途に活用する。その奥には、革製品を最適な状態で保管するための倉庫部屋も作った。
馬具作りに感銘
バッグと並んで、室内には馬のくらを飾っている。あぶかわさんは独立する前、国内の馬具メーカーで生産から企画、営業までを経験し、馬の動きにフィットする形状を作る技術力や乗馬する人の命を守る設計に感銘を受けた。その堅実な物作りを受け継ぎ、現代のライフスタイルにリアリティーのあるデザインを提案したいとの思いで、国内のバッグ職人と共に製作している。ピエニは、1本のシームでマチを作りながら縫い合わせたトートバッグなど、馬具の技術をミニマルな形で表現する。
アーは本革の風合いを最大限に生かしたシンプルな形のバッグだ。乗馬の道具が全部入って自立するバケツ型のクラブハウスバッグなど、乗馬を愛好するあぶかわさんの実感を元に作ったモデルもある。自然堂プラットフォームでは、そういったプロダクトの成り立ちを身近に感じてもらいたいと乗馬を体験できる環境を整えた。今後は、近隣の乗馬施設から馬を借りて、顧客に楽しんでもらう機会を企画する考えだ。