馬油との出会いが一人の主婦の人生を変えた。30年間、苦しんできた肌のただれ、かゆみから救ってくれた馬油への感謝の思いから、会社を立ち上げ馬油の販売を始めることに。就業経験のほとんどない専業主婦の孤独な挑戦。無謀とも思える取り組みだが、馬油への思いと熱意で困難を切り開き、大手百貨店も注目する存在に駆け上がった。
(神原勉)
希少部位の馬油
馬油ブランド「サンキューバーユ」の創業者、岡田恵子さんは21歳の時、手に重度のやけどを負った。移植した皮膚は、どんな療法を試みても潤いは戻らず、黒くただれ、かゆみも解消しない。やがて朝起きてから30分ほどは指が硬直し、全く動かせないほどになった。
「もう仕方がない」とあきらめていた50歳の時、夫が馬油をプレゼントしてくれた。「馬油はかつて1度、使ったことがあり、効用は期待していなかった」が、この馬油は、たてがみの部位〝こうね〟を原料にした希少な油脂。臭いもなく、べとつかず、「乾燥した肌に自然に入っていく」感覚に驚いた。毎日使っているうちに肌が滑らかになり、1年でかゆみが治まり、2年で黒ずみが消え、3年目には爪もしっかりしてきた。