コレクション発表の場をミラノへ TOOT枡野社長に聞く

2018/12/05 06:28 更新


 メンズインナーのTOOT(トゥート、東京、枡野恵也社長)は19年秋冬コレクションから、発表の場を海外に移す。15年の社長就任当時から、海外で発表すると話していた枡野社長に、これまでの3年とこれからの方向性を聞いた。

(壁田知佳子)

 ――社長就任から約3年半。これまでの到達点は。

 就任当初、「リブランディング」と「グローバル強化」の二つの課題を掲げましたが、直面した最大の課題は、生産量をいかに増やすかでした。在庫を持つビジネスの、在庫の重要性を痛感しました。

 主力商品のボトムはほぼ毎週、新作を出しています。パターンはすべて異なり、縫製で注意すべき点もアイテムごとに変わります。この難しいアイテムを、品質を落とさずに提供するというトゥートが目指す物作りは、宮崎の自社工場でしかできません。この3年間で工場は人員を倍増させました。技術の取得に時間がかかり、現状では生産数の伸びはもうひといき必要だとは思いますが、一定のめどがつきました。

 併行して実施してきたリブランディングでは、知る人ぞ知る下着ブランドから、アンダーウェアを軸としたファッションブランドであるという認知が広がってきました。国内市場は安定成長を続けています。一過性のブームで終わらせないための、アクセルとブレーキの踏み分けには非常に注意を払っています。

◆グローバル化は道半ば

 グローバル化は道半ばです。アジアは台湾での常設店出店など大きく進展しました。課題となる欧米は、「ピッティ・イマージネ・ウオモ」に継続して出展していますが、壁は高いと感じています。また、商標や物流の問題、さらに、各国で漂う内向きになりがちなビジネス上の空気にも直面しています。

 この3年間、経営戦略は正しい方向に着実に進んでいます。これからの3年は、品質を維持・向上させながらの生産量の拡大と、欧米市場の切り崩しが課題となります。

◆顧客への感謝表す

 ――前回のコレクションは〝日本最後のショー〟と公表していた。

 10月のショーはバイヤーやプレスのほか、顧客や公募で募った来場者の約600人が来場しました。2000人から応募があり、希望者全員に見てもらえなかったのは申し訳なかったのですが、顧客に支えられて成長したブランドとしての感謝を表しました。日本での開催がなくなることを残念に思ってくれる人も多く、将来、胸を張って凱旋(がいせん)公演ができるようにしなければなりません。

 ショーではダイバーシティー(多様性)を表すため、ブランドのファンや様々な競技のスポーツ選手などが公募モデルとして出演してくれました。

 ショー後の記念撮影には長蛇の列ができました。「遊び心を忘れない」こと、常に「進化し、挑戦する」というブランドの根底にあるものを忘れずに、下着に対する価値観を変え、人の気持ちの変化を喚起するブランドとして、これからも存在させていきたいと考えています。

10月に東京で開いた19年春夏コレクション

 ――次のコレクション発表の場所は。

 ミラノです。海外開催を考えたときに、新規性やユニークさを受け入れてくれる土壌である場所でと考えました。欧州には過去10年来のユーザーもいますので、そういった人たちに影響力を発揮してもらうことや、リアル店舗での期間限定店の出店など、コレクション発表以外にも認知度を高めるための活動を展開します。

枡野社長


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