大阪府・吹田市に住む堤俊亮さんは、11歳の時にギランバレー症候群を発症、下肢の筋力低下で自立歩行が困難になった。府立支援学校を卒業後、特定非営利活動法人のすまいるに通うなか、就労支援で出会ったのがレザークラフトだ。プラモデルで培った手先の器用さを生かし、道具を購入しながらこつこつと革小物を作ってきた。一念発起し、ビジネスの世界に一歩を踏み出そうと、1月に行われたスポーツ合同展「SIMEx」に出展した。
(山田太志)
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「ビジネス、展示会どころか、これまでは出掛けたり、色々な人と話をする機会も少なかった」。残念ながら今回のSIMEx展は、オンライン開催となったが、展示ブースで自慢の商品をメディアや他の出展社にアピールした。
素材には強いこだわりを持つ。「革の宝石」とも呼ばれるベルギー産の最高級レザー「ルガトー」をはじめ、インポート素材を積極的に活用。30センチ×40センチで3000円以上する高級革をECサイトなどで仕入れている。革を水に漬け、万力などで形を整えながら、温めたアイデアやデザインを一つひとつ形にしていく。
自信作の一つが「革魚」(かわざかな)。名前の通り横から見れば魚の顔になるデザインだ。カラフルな色使いで、数多く並べるとユニークさが引き立つ。コインケースを想定していたが、ゴルフボール入れなどにも使える。1980円。
「革たい焼き」も主要作品の一つ。革を本当のたい焼き機で型押ししたもので、うろこや尾びれがくっきりと出る。5500円。そのほか、「おでかけトレイ」「コインキャッチウォレット」を揃えている。いずれも革独特の経年変化が楽しめる。
これからは、財布など少し大きなものにチャンレンジしていく予定。レーザー加工機を導入して物作りの幅を広げると同時に、ホームページなどによる情報発信も強めていく考え。
手作業なので多くは作れない。何よりも「こんな美しい革を作り上げる海外の職人さんのことを思うと、絶対に革を無駄にせず、一つひとつ丁寧に作っていかないと駄目」。
出展に当たり価格を設定したが、これまでの作品は知人にプレゼントするぐらいだったので、どう評価されるかはこれからだ。「実際に商品を買ってくれる人が増えて、自分も革のなめし工程などを見学してみたい」。個性的な商品以上に、にこやかな表情が印象的な21歳だ。