「古くて新しい素材」生活へ浸透
速乾・保温・放熱の性能生かす
リネンブランド「ヴラスブラム」は、16~17年秋冬物で丸10年を迎える。秋冬物は「ギャラリー」をテーマに、過去に生み出してきた商品を再度見せるとともに、獣毛・リネン混のロングコート、刺繍入りニットトップなど、リネンの特性を生かしたアイテムも進化させている。
先駆けも今や競合ひしめく
ウール・カシミヤ・リネン混のロングニットカーディガンは、リネンの伸びない特性を生かして、だれるのを防ぎ、保温効果も加える。ウール・リネンのトレンチコートは、糸の縮率の違いで、加工後に独特の凹凸とムラ感を出せる。リネンデニムは、旧式シャトル織機で生産した。使い込むとさらに柔らかく、体にフィットする。
リネンウェアの企画・開発で、地道に着々と先駆け的存在を果たしてきたものの、現在の国内市場には競合ブランドがひしめくようになった。ニット工場、カットソーメーカーがファクトリーブランドを立ち上げ、リネン使いを強化したり、コットンでも同じテイストを打ち出すブランドが増えた。
「10年前は誰もいなかったが、今は競合だらけとなった」と石井智アテンションジャパンプロダクツ取締役は苦笑いするが、今後10年はコルトレイクリネンの原料から扱える強みを生かして、ライフスタイル全般にリネンを浸透させていく。
今秋に展示会を行う17年春夏物は、定番を見つめ直すことをテーマに掲げている。テキスタイルの可能性を引き出し、ライフスタイル表現を見据えつつ、天然で速乾・保温・放熱のリネンの特徴を生かせる協業も視野に入れる。
効率的な生産技術に期待
石井さんはこれまでの10年の歩みは「リネン再発見の黎明期」とし、今後10年がリネンの「成長期になる」と見る。折りしもここ最近はリネンがブーム。「無印良品」や「ユニクロ」がリネンシャツを戦略商品として販売。マスマーケットへリネン商品が広がるとともに、冬にリネンを着ることも徐々にではあるが、意識が変化してきた。
「いろんなブランドがリネンを使うことが、リネンの価値の啓蒙(けいもう)になっている」。最近は中国でリネン紡績が広がり、素材開発も進んでいる。来年以降も展開するメーカーや小売店が増え、素材として使われる機会は大きくなりそうだ。
ただ、良質リネンは栽培に手間がかかり、原料自体は高価で、生地生産も非効率的。「たぶん取り扱った企業は、B品が多いなど効率が悪いと思っているのでは」。しかし今後、世界的に需要が高まれば、編みのための機械発展も進んで、より扱いやすくなる可能性がある。「当社の今後の役割は、リネンの価値を消費者に広く浸透させるとともに、リネン畑から店頭までをつなげること。古くて新しい素材を、ニッチから広いマーケットへ浸透させたい」。新しいヴラスブラムの挑戦が秋から始まる。