SPA(製造小売業)という“自分で作り、自分で売る”ビジネスモデルの登場により、90年代の日本で、日本企業の手による新しいブランドが次々を生まれるわけですが、それまで主流だった海外ブランドのライセンスと違い、そこに“ブランド”はありません。なんせ生まれたての赤ちゃんのように、ゼロからのスタートなのですから…
日本におけるブランディングは、以下のようなステップを踏みます。
1、ターゲットを定める
ライセンスではない場合、自ら、1からブランドを作らなければなりません。日本人の手で日本の消費者のために新たに作るブランドですから、お手本はありません。まずは誰に来て欲しい(あるいは身に着けて欲しい)のか、がスタート。年代や、働いているか否かといった生活のスタイル、あるいはどのようなテーストを作るのか、ブランディングはまずはコンセプト作りから始まります。
最初はまっさらな状態。テーゲットを決めるところから
当時の中心は、都市部で働く女性、いわゆるキャリアに向けた服が多く、その後は団塊ジュニア世代など人口構成の大きな層に向けた開発が増えていきます。
2、お客さんを知る
次に、狙う消費者がどのような生活を送り、どのような商品を好むのかを調査します。それに合わせた企画・デザインを作り、商品化していきます。ブランド作りはこうした作業と平行して進めます。海外ブランドのようなイメージを打ち出したいのであれば、フランス語や英語を使って〝洋風〟に。オンワード樫山のレディス「組曲」や「23区」、メンズ「五大陸」といった日本語のブランドも登場しました。
3、世の中に伝える準備
商品化の一方で、宣伝・PRの計画も進めます。一番大切なことは、ブランドにふさわしいイメージをどうすれば的確に消費者に伝えられるか。年代に合わせたモデルやタレントを使ったり、最近ではテレビコマーシャルでイメージを伝えることも、改めて重要視されてきました。
ブランドにふさわしいイメージを消費者に的確に伝える。それを起点に、ビジュアル等を制作する
そして当然、売り場でも販売員さんを通じてイメージや特徴を的確に伝える。売り場もイメージを生かせるように、色や建材、家具、マネキン、什器などを変える。新しい製品が入荷すれば、店頭のビジュアルを変え、情報を顧客に伝えて来店を促す。来店した顧客の情報はきちんと管理していく、といった具合です。
※海外と日本との違い
ただ、海外ブランドとの大きな違いは、ブランドの歴史や伝統が薄いこと。そうした背景がないため、トレンドの変化への対応、つまりはマーチャンダイジング(MD)に偏重しがちなことです。そして、トレンドの変化にスピーディーに対応するため、SPAという仕組みをフルに生かすことになります。
海外ブランドと日本のそれとでは、成り立ちがが異なる
もう1つは、イメージを打ち出す手段です。海外ブランドは優秀なデザイナーを雇って大規模なショーを開き、それを直営の大きな店で紹介できる。しかし、日本のオリジナルブランドがショーを行うことは稀で、店も百貨店のインショップなどに限られます。
(続く)