レディスブランド「WRINN(リン)」(オーク)が成長している。昨年10月、「アウラ」の元デザイナーの川島幸美が「持続可能なファッションを通して地球の自然環境に貢献する」ことをミッションに立ち上げた。従来からのアウラのファンと卸先の専門店の顧客を中心に支持を広げている。今後は自社ECを伸ばし、SNS活用などでブランド認知を広げる。
月に新作3、4型
川島は数年前から、環境に配慮した服作りを考え、リンを始めた。DtoC(メーカー直販)ブランドの位置づけとし、自社ECのほか、地方専門店約30社と期間限定店で販売する。
廃棄を抑えるため、月に新作を3、4型ずつ出す。シーズンの立ち上がりは、小ロットで売れ行きに応じて追加生産する商品もあったが、今後は全て受注生産にする計画。必要とされるものを必要な量だけ作って売り切る考えで、値引き販売もしない。服はオーガニック綿や「テンセル」などの環境に配慮した素材を使い、国内で縫製する。
今後の課題の一つは自社ECの成長。コロナ下でECでの購買に抵抗が和らいだ消費者も多い一方、「実物を触って着てみたい」との消費者心理は依然としてあるとみる。実際、EC上では日本人モデルが着用した商品画像を掲載しているが、サイズ感やフィット感を知りたいとの声がよく寄せられる。
例えば、商品を一度購入した客は、着心地やシルエットが気に入り、色違いや他の商品を購入する場合が多い。阪急うめだ本店の期間限定店では20~50代の客が来店し、開催後にはECで関西圏の客の注文が伸びた。
SNSも積極活用
東京・代官山のショールームをアポイント制で顧客にも開放、実際に試着してもらってECでの購買を促すことも考えている。インスタグラムやユーチューブなどSNSの活用もより充実、著名人との協業で話題も作る。
7月には篠田麻里子さんと協業したiPhoneケースの予約販売を始めた。篠田さんが自身のインスタライブや投稿で紹介したこともあり、好評だ。
課題はほかに「トレーサビリティー(履歴管理)が明確な、国内産のサステイナブル(持続可能な)素材が本当に少ない」ことも。調達に限りがあるなか「今春から大手企業の引き合いが増え、在庫がなくなるのが非常に早い」。「再生原料を100%使った素材と、付属品もできるだけ環境に優しいものを使いたい」との思いも強いが、そうした素材もほとんどない。
地球環境に配慮した生産背景や素材の活用だけでなく、国内の縫製工場へ仕事を安定して供給できることが産業の持続可能性になると川島は考える。「業界と一緒にファッションでサステイナブルなビジネスを築いていきたい」と話す。