美容雑誌のアルーアが7月1日、初の直営店をノリータにオープンした。場所はかつて、セレクトショップのカリプソが店を構えていたところ。カリプソは90年代から2000年代にかけて大人気のセレクトショップで、店の数を16まで増やした。しかし2017年、清算したと報道された。カリプソのウエブサイトとSNSはまだ残っていて、ウエブサイトには「2021年初夏に戻ってきます」の一言のみが記されている。再建に向けて動いているようだ。
いずれにしても、一世を風靡したファッションのセレクトショップが大きな店を構えていたところにビューティの店がオープンしたことは、時代の一片を象徴しているといえるだろう。
美容関係の商品は、コロナ禍の巣ごもり期に売れたカテゴリーの1つだ。フェイシャルマッサージや美容院に行けなくなった分、家で肌や髪のケアをするようになり、いろいろな商品の存在とスキンケア、ヘアケアの手法に興味を膨らませた女性は多いのではないだろうか。そして、そんな女性たちがアルーアの編集者のお勧めを頼りにしたとしても不思議ではない。アルーアは、紙媒体の読者410万人、デジタル版読者月平均1100万人、ソーシャルメディアのフォロワー数440万人、動画視聴者月平均3630万人を誇る、大きな影響力のあるメディアである。美容に特化したアルーアだからこそこうした店をつくれたと思うが、物販を通じて収益を得るビジネスモデルは、メディアが収益性を高めるための新たな手法として注目に値する。
店内に入ると、まず目につくのは、それぞれの商品の前に置かれたQRコードだ。これを携帯電話のQRコードリーダーで読み取ると、商品の説明を読んだり、オーダーして決済したりすることができる。
店の随所にはタブレットが置かれていて、タブレットを通じても同様の作業をすることができる。自分のペースで好きなように商品チェックできるのは心地よい。どうしてもわからないことやアドバイスを求めたい時だけ、スタッフに声をかければ教えてくれる。私はあるマスカラについて聞いてみたところ、彼女は持っていた自分の携帯電話から、そのマスカラを塗ったらどうなるかを示す動画を選んで見せてくれた。
ニューヨークでは過去に、同じように化粧品のサンプルを並べてその場でオンラインで注文できる期間限定店がオープンしたことがあったが、店内に在庫はなく、後日宅配してもらうしかなかった。この店では、地下に在庫を置いていて、その場で持ち帰ることができる。コロナが広まった昨春以来、ネットで買って店でピックアップするサービスを提供する店が増え、それを利用するお客も増えて、すっかり定着した。ショールームのような店でも、その場で持って帰る選択肢ができたことは便利である。
洗面台もあり、商品によってはサンプルを試してみることもできる。
店内はゆったりしていて見通しがよく、明るく清潔。興味のある商品のQRコードをスキャンして読み続けていると、結構長居することになる。この店の存在が美容に興味のある女性を増やすことに繋がったら、アルーアにとってさらに好影響をもたらすことになる。ファッションも、ファッション自体に興味をもってもらえる楽しい場がもっと増えたらいいと思う。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)