ファッションと小売業をITと繋げるコンファレンス「ザ・リード・イノベーションサミット2022」が7月半ば、2日間にわたって、ブルックリンで開催された。リモートワークでないと敬遠されて人を雇うのが難しいと言われる昨今、サミット中のセッションでも「出社するといいことがあると思ってもらえることが大事」という話が出た。それは、対面式コンファレンスも同様ではないだろうか。ザ・リード・イノベーションサミットは2018年、2019年に続く3回目の開催となった新興コンファレンスだが、今回、演出が非常にうまく、来場者たちを楽しませ、時代性を感じる要素がいろいろあった。実際、「このコンファレンス、すごくいい!」との声が多くの参加者たちから聞かれた。主催者にとっては、セミナーのコンテンツ以外の要素もあれこれ考えないといけないのは大変だろうが、今の時代のコンファレンスの運営方法の参考になればと思い、紹介する。ちなみに、主催者側によると、参加者数は1400人弱。2019年の参加者数も1400人で、コロナ前とほぼ同程度の参加者数となった。
会場は、ブルックリンのウイリアムズバーグにあるオフィスビルの5階と6階。アマゾンミュージックなどの企業が入居しているビルだ。2日続けて朝早くからブルックリンまで行くことを不便と感じる人もいただろうが、最寄り駅から徒歩5~6分で、イーストリバー越しにマンハッタンの摩天楼を眺められる会場は、悪くないチョイスだったと思う。
朝食用のペストリーとコーヒーが用意されていたのは、アメリカのコンファレンスでは比較的普通だが(「ビーガンのものが何もないなんて信じられない!」と憤る参加者がいた)、ランチが充実していた。シェイクシャック(ハンバーガー)、スイートグリーン(サラダ)、ロスタコスナンバーワン(タコス)、タイム(ファラフェル)と、地元の人気ファストフードチェーンが並び、食べたいもののところに並んで受け取るシステム。スイートグリーンでサラダをピックアップした後、シェイクシャックの列の並んでくる人もいた。みんなわくわく嬉しそうだったし、地元のチェーン店にもメリットが大きい。ロスタコスナンバーワンはその場でトルティーヤを焼いていて、ライブ感があったのも楽しさをプラスした。ちなみに、水は朝、空の水ボトルを提供するブースがあり、給水場で各自が水を入れる仕組み。これは2019年開催時も同様で、環境への配慮からペットボトルの水の配布は廃れる方向にあるといえるだろう。
1日目の終了後、すぐそばのボーリング場のブルックリン・ボウルと、隣接する人気クラフトビール醸造所のブルックリン・ブルワリーでアフターイベントが開催された。合同展でもアフターイベントが行われることがあるが、会場が遠かったり、終了してからアフターイベントまでの間に中途半端に時間があいて、行く気をそがれてしまうことが結構ある。ザ・リード・イノベーションサミット2022の場合は、アフターイベント会場の近さとセッションが終わってすぐ始まるタイミングの良さが絶妙だった。
ブルックリン・ボウルはチャリティーも兼ねていた。ボーリングで倒れたピンの数が多ければ多いほど、身体障がい者が自信をもってファッションを楽しむ環境づくりを推進する非営利団体「ランウエー・オブ・ドリームズ・ファンデーション」に寄付がいく趣向だった。2日目の朝、企業からの寄付も併せて1万ドル以上が集まったと報告された。初日は、ランウエー・オブ・ドリームズ・ファンデーションの創業者兼CEO(最高経営責任者)のミンディ・シャイアー氏の講演もあった。
ボーリングが始まる前は、参加者たちは食事を楽しんでいた。
隣接するブルックリン・ブルワリーではビール醸造についてのツアーが行われ、その後多くの人々がビールを楽しんだ。ボーリングとビール、どちらかに参加してもいいし、両方参加してもいい仕組みだった。
セミナーのスピーカーたちの人選も満足度が高い上、「充実した食」「地元と密着したコラボ」「チャリティーへの貢献」の3要素が揃い、来年はどういう演出をしてくるのだろうと今から楽しみだ。主催者は1回目から同じで、スポンサーを集めてくるその手腕も頼もしいといえるだろう。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)