大統領選挙の投票日を11月3日火曜日に控え、ニューヨークでは再びウインドーに板を打ち付ける店が出てきている。6月にブラックライブズマターのデモに乗じた犯罪者グループにウインドーを壊され商品を略奪された店は、投票日当日あるいはその後になんらかの抗議活動や不穏な動きが発生し、それにかこつけて店が再度襲われるのではないかと恐れているのだ。
金曜日の時点で、板を打ち付け始めたとテレビのニュースで最初に報道されたのはメーシーズだ。とはいえ、店自体は通常営業を続けている。
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ニューヨークはそうでなくても、治安が非常に悪くなっている。ニューヨーク市が作成し、ネットで見ることができる「クライム(犯罪)マップ」によると、29丁目から45丁目、レキシントン街から9番街の間が最も犯罪件数が多い。34丁目沿いにあるリーバイスやティンバーランドも、ウインドーとドアを厳重に板で覆った上に、「営業中です」というサインを張り出している。お客も普通に出入りしている。
5番街沿いの店も、ヴァンズ、ゲス、サクスフィフスアベニュー、バーグドルフグッドマンなどが略奪から店を守る準備を始めた。ニューヨークの街に再び、板を切ったり打ち付けたりする音が響いているのは、なんとも悲しいような情けないような気分だ。
6月に特に略奪の被害が目立ったソーホーでもセリーヌ、グッチ、セフォラ、パクサン(旧パシフィックサンウエア)、フォーエバー21、ザ・ノースフェイスなどが板を貼って防御している。前回窓ガラスを割られたシャネルは、木製の板ではなく黒い金属製の板を張り巡らした。ルイヴィトンも前回同様オレンジの大きな板を張り巡らしているが、やはり板だけでなく、その上にオレンジに塗った金属製の板を打ち付けている。前回、板を打ち付けてあっても簡単に外された店が多かったためだ。板を外せる機材をもってやってくるプロの犯罪集団なのだ。プラダはウインドーの内側に金属製の網目状の覆いを付けた。また襲撃されて余計な出費がまた発生することをなんとか防ぎたいという、必死の様子がみてとれる。これらの店は通常営業しているが、バルマンとパドカレは店内の商品をすべて撤去し、臨時休業している。
ソーホーのモンクレールでは、板を打ち付けられた店の前に行列ができていた。ソーホーのカナダグースの店の前にも、雨にもかかわらず傘をさして行列するお客の姿が見られた。せっかくファッションへの購買意欲ができてきたのに、暴動が起きてまた消費への意欲がそがれてしまうかもしれないと思うと、非常に残念だ。
大統領選挙の投票日を控えてこのような事態になるなんて、先進国の在り方とは思えないし、トランプが大統領になっていなかったらこんなことにはなっていなかっただろうと思う。しかし、それでもトランプを熱狂的に支持する人々が選挙権をもつ人々の半数近くいる、つまり「トランプは自分の気持ちを代弁してくれている」あるいは「トランプが再選する方が好都合」と思う人々が約半数いることも事実だ。トランプとバイデンのどちらが選ばれても暴動は起きると言われている。ニューヨーク市はいまだ、レストランの中での飲食はキャパの25%までに制限され、それが引き上げられる見通しはたっていない。アウトドアダイニングで凌いでいるレストランが多いが、ただでさえ採算がとれない状況が続いているのに、暴動が起きたら外食どころではない。これ以上ニューヨークの経済に打撃となる暴動が本当に起きるのか、起きたとしてどの程度の規模になるのか、ニューヨーカーたちは固唾をのんで見守っている。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)