「ヨウヘイオオノ」のクリエイションを見たときに、ちょっと変わったことをするデザイナーだと意識した。それを決定づけたシーズンもあるのだが、不思議とその後のコレクションは静かだった。23年春夏コレクションでショーを再開した大野陽平に、クリエイションの核にあるものを聞いた。
(小笠原拓郎編集委員)
小笠原 以前見たコレクションですごく覚えているのは、家具と一緒に見たコレクションですが、あれはいつのシーズンでしたか。
大野 18年秋冬コレクションですね。あれは自分でもすごく印象に残っています。それ以前に2回、ショーをやったのですがピンと来なくて、インスタレーション形式にしたシーズンです。ランウェーは一瞬じゃないですか。一瞬で伝わるものとか、服だけでなく全体としてエネルギーを出せるか。でも、自分の服はビビッドなものでもないし、細かく見てもらった方が良いかなって思ったので、家具と一緒に空気感をどう出すかと思って見せました。それが運よくはまった感じです。
小笠原 あのシーズンは、はまった感じはありましたね。でも、今回はショーに戻しました。それは全体で伝えたいことがあったってことですか。
大野 18年のインスタレーションの後、日本のマーケットと格闘して修行みたいなことをしていました。僕はアパレル経験がなくて、商品構成とかも分かっていなかった。それこそ、メンターみたいな人と一緒に、アイテム構成とかコレクションの作り方とかをちゃんとする作業をしていました。
次第に、顧客の顔も見えてきて、最近はその人たちに対して服を作っているようになってきた。それが逆に嫌になった。顧客との対話性が一番になっている気がして。最初の頃は、エゴでも自分がこういうことをやりたいという強い意志があった。もう少し思い切って自分に新しいハードルを課すには、ランウェーショーが一番かと思いました。
ショーというフォーマットでは、有名メゾンだろうと小さなブランドだろうとフラットに見られる。言い訳が通じない世界です。良いものは良いし、良くないものは良くない。そういう勝負の世界にもう一回立たないとダメなんじゃないかなって思って。
小笠原 で、勝負の場に立ってどうでしたか。
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