アイウェアデザイナー、外山雄一(アトリエサンク代表)が手掛ける眼鏡ブランド「ユウイチトヤマ」が4月1日、初の直営店を東京・南青山の骨董通りに開設した。ブランドの哲学を伝える旗艦店として、売り場の奥にオーダーメイドルームも設置。外山さん本人と話し合って一から作る眼鏡フレームの受注生産も行う予定だ。
(河邑陽子)
機能美を持つ
外山さんは93年に福井県の眼鏡メーカーに入社し、マーケティングや企画開発を担当。04年に独立し、アイウェアのデザインやコンサルタントを開始。09年に独自ブランド「アッシュ」(USH)を立ち上げ、17年に現ブランド名に変更。昨春、別ブランドの直営店を東京・渋谷パルコに開設したが、基幹ブランドでは今回が初の直営店。
ユウイチトヤマは「ニュートラル」がコンセプト。暮らしと調和し、用の美や機能美を併せ持ち、素材の特性を生かした眼鏡を提供する。福井県鯖江市を拠点に伝統的な職人技術を使い、そぎ落としたデザインの眼鏡は、独創的かつ日常に寄り添うプロダクトとして国内外で評価が高い。現在、卸先は海外が15カ国以上550店、国内は約150店。その一つ、東京・恵比寿のコンティニュエとの協業品や、金型、塗装など眼鏡の各工程の鯖江市の5人の職人と協業したラインが人気だ。
アートのように
旗艦店は「工芸品としての眼鏡」を世界に発信する目的で、骨董通りに出店した。店内は約90平方メートルで、「緊張とくつろぎ」がテーマ。直線的な壁と什器で囲まれた中央部に、大蔵山スタジオに特注した伊達冠石のテーブル、セラミックアーティストの橋本知成さんの岩のようなオブジェ、丸みを帯びたいすを配置した。土間のような洗い出しの床、なぐり加工の木製のレジカウンターなど、職人のぬくもりが感じられる空間に仕上げた。
入り口側のスペースには、同ブランドの最新作から、発売当初からのアーカイブ的な商品まで、250~300SKU(在庫最小管理単位)を常備。5人の職人と協業したプレミアムライン、昨年11月に発売したジョルジオ・アルマーニとの協業品なども販売。壁には姿見など大きな3枚の鏡を備え、アートを楽しむように眼鏡を体感できる。
店舗の奥には〝アジト〟と名付けたオーダーメイドの部屋を設け、外山さんと時間を共有して生み出す〝新たな発見と特別なあつらえ〟の一品を提供する。外山さんの発想の源泉となる音楽やアート、工芸が詰まった部屋で、10代の頃に買ったターンテーブルとレコードのコレクション、ジョージ・ナカシマのウォールナット製のアーム付きラウンジチェアなどを備える。売り場とは異なるスピーカーや芳香器を使い、リラックスできる環境を整備。外山さん自らヒアリングし、生活に寄り添いつつ、格好いいと思う眼鏡を提案する。オーダーメイドは熟練試作職人と組み、9月以降に受注を始める予定だ。
旗艦店ではブランドの哲学や独自の世界の発信を強めつつ、新たな可能性を探る場としたい考えだ。