英国のクラシックとエキセントリック
【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】ダークなロマンティックスタイルが広がる16~17年秋冬ロンドン・コレクション。バーガンディやディープグリーン、マスタード、ルビーレッドといったリッチカラーにライラックやピンクを加えた色がリードしている。ドレスが主役になる中、フリルを飾ったハイネックやがっちりとしたシャツカラー、スヌードなどで襟元を詰めた禁欲的なスタイルも目立つ。クラシックエレガンスに着想を求める一方、それだけには終わらせないパンチの利いた味付けとして、パンクやグラムロックも散見される。
ロクサンダはペトロール、バーガンディ、タバコブラウンなどリッチな色でつづるダークな気分を秘めた新作を見せた。しっとりとしたウールやスエードのコートにサテンのワンピース。ペーズリーを浮かべたブロケードのワンピースやアールデコ風の柄をはめ込んだインターシャニットは、ラメの輝きがデカダンなムードを放つ。
フリルカラーやロングポイントのシャツカラー、あるいはファーのスヌードなどで襟元を詰めたデザインも特徴。ほっそりとしたロングスカートに加えられたミニドレスの足は、ベロアのタイツですっぽりと包まれている。気分はデボラ・ターバビルの写真やイタリア映画「愛の嵐」。デビュー11年。フィナーレを飾ったティアードフリルのレースのイブニングドレスが、記念すべき1000着目のドレスとなった。
アーデムのフリルやレースを多用したビクトリアンドレスも、今シーズンはぐっとダークな印象。オーガンディや繊細なレース地へのプリント、ラメの輝きで包むブロケード、重みのある花刺繍、異素材のパッチワークやレイヤードといった複雑なテキスタイルを多用しながらも、ベースとなる素材は頼りないくらいに薄く、軽い仕上がりになっている。襟元はがっちりとしたレースのシャツ襟やベルベットのリボンタイで飾る。
バーバリーは、ブランドレーベルの統合を発表して初めてとなるレディスを見せた。テーマは「パッチワーク」。パターンや異素材をパッチワークするという意味とともに、英国のさまざまな要素をパッチワークするという意味も込めている。ミリタリーやブランドのアーカイブ、ブルームズベリーグループ、グラムロックやパンク、カントリースタイルなど、英国を代表する要素を取り入れた。ミリタリーコートにモヘアタータンチェックのトレンチコート、ファー襟のダウンコートなど、ブランドの伝統でもあるコートのバリエーションも充実している。
こうしたアウターとコントラストを作るのはスパンコールフラワーのミニドレスにきらびやかなビジュー刺繍のドレスといったもの。エレガントで洗練されたドレスと堅牢な仕立てのコートという、相反する要素を組み合わせる。パイソンがキーとなっていて、パイソンのコートやパイソンのカラーブロックドレスのほか、パンツの側章にパイソンレザーを走らせたり、箔(はく)のドレスのプリーツにパイソンを切り替えたり。
コレクションを製品発売半年前のプレスやバイヤーをメーンターゲットとしたものから、顧客の需要喚起につなげるダイレクトのビジネスツールへと転換を図るバーバリー。9月のショーは翌日から製品を発売するのに対して、今回は、今までのやり方の最後のショーとなった。ただし、ショーの翌日からリージェントストリートの旗艦店で、新作を顧客にも披露し、オーダーも受け付ける。
初めてロンドンでコレクションを見せたAFヴァンデヴォルストは、黒と白を軸にフェティッシュなマスクやロングブーツを合わせたシャープなスタイルを揃えた。フロントツーバックのデニムパンツやデニムの布地をドレープ状に身頃に沿わせたデザインなどが目立つ。ランウエーの様子を3台の手持ちのカメラで追いかけながら、そのライブ映像を会場のスクリーンで流すという趣向。そこには、ライブストリーミング発信という現代のファッションショーの定番となったやり方に対する彼らなりの意見表明だったのかもしれない。しかし、残念ながらカメラマンが観客の前をせわしなく動き回りすぎて、服のイメージが入ってこない。
(写真=catwalking.com)