ファッションビジネス業界は厳しい状況が続いているが、こういう時代だからこそクリエーターの強いもの作りが光っている。東京らしい軽やかなムードをベースに、ブランドらしさを突き詰めて、そこにトレンド要素もひとさじ。東京コレクションでは、そんなブランドのショーに勢いがある。(五十君花実)
デジタルなのにアナログ/ミントデザインズ
ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)が一歩踏み出したショーを見せた。プリントや織り柄の変化で見せるスタイルは常に得意としてきたが、今季は素材、ディテール、フォルムともに新しい挑戦を感じる。冒頭は、「レゴブロック」を組み合わせたような柄が特徴のフェイクファーシリーズ。ボリュームフォルムのコートに仕立てたり、バックをレザーに切り替えてガウチョにしたり。フェイクファーのケミカルなムードは、ピンクや透明のPVCを刺繍したチュニックやストレートスカートにつながる。フォルムに変化をもたらすのは、レザーに細かくギャザーを寄せたパーツ。
ドレスのウエストに挟み込んでシルエットをすぼめ、スカートのフロントに斜めに切り替えてドレープを流す。最後は、ジップの結合でカラフルなボーダー柄を作るスーツやコート。おもちゃのようにチアフルな感覚がいかにもミントらしくてさえている。ファーはフェイクだが、色に合わせて刈り込みの長さを変えるという凝ったもの。PVCパーツの刺繍も細かい。「フェイクだけれど手が込んでいて、デジタルな感覚なのに手法はアナログ」。その対比が生む浮遊感を狙った。着想源は、ポストモダンのインダストリアルデザイナー、エットレ・ソットサス。
妖しく輝くダークファンタジー/ケイタ・マルヤマ
ケイタ・マルヤマ(丸山敬太)は、前シーズンに見せた砂糖菓子のようなおとぎ話の世界が、シックでダークなファンタジーへと変化した。夜空にきらめく星や星座を、フィット&フレアのコートドレスやボウドレスに載せる。黒いチュールからのぞく素肌や、ラメジャカードの妖しい輝き、アイシャドーがにじんだようなメークからも、ケイタらしいデカダンなムードが漂う。細かな刺繍のチャイナガウンやパンツなど、アイコンとも言えるシノワズリの要素も健在だ。ギョロリと目が光るネコの顔のファーバッグやストールに、ドラゴンの編みぐるみと、話題になりそうな雑貨も盛りだくさん。「ファッションはファンタジー」と語り続けてきた丸山ならではのショー。