22~23年秋冬パリ・メンズコレクション デジタル発表とともにパリで展示会も

2022/01/31 11:00 更新


 22~23年秋冬パリ・メンズコレクションのふたを開けると、スケジュールに載った76イベントの半数以上がデジタルだった。中にはデジタルでの発表とともに、展示会で実際にコレクションを見せたブランドもある。

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〈フィジカル〉

 サルバムは、本格的に日本からパリへ殴り込みをかけた。フランス社の開設とともにアトリエをオープンした。それもデザイナー藤田哲平の古巣であるヨウジヤマモトのパリのオフィスの真裏で、天窓から丸見え。全くの偶然だったそうだが、かつてのボスからは激励を受けたようだ。そんなこともあり、パリの新アトリエには藤田の姿があった。服作りの様子をインスタライブ、デジタルプレゼンテーションとともに発信した。

サルバム

 ハウンドトゥースにフラノウール、ギャバジン、伝統的な素材に目を向けクラシックテーラーリングを再解釈した。ウエストを軽く絞ったスリムなジャケットに対しパンツはワイド、シルエットのコントラストだけでなく、裏地が見えているような切り返しのポケットで素材にもメリハリを付けた。実はシグネチャーとも言える裏地見え隠れは、最近封印していたという。

 オム・プリッセ・イッセイミヤケの着想源となったのはテントだ。それもスタッフが1日テントで過ごし、その作りや機能性を研究したようだ。パリの展示会ではそのプロセスだけでなく、プリーツ加工前後のガーメントをディスプレー、映像には加工の様子が映し出された。基本的に縫製後にプリーツが施されるのをご存じだっただろうか。プリーツの他にも折り紙のように折ることでブルゾンになるコートもあった。

オム・プリッセ・イッセイミヤケ

 クレージュは、ユースカルチャーの発信源であるナイトクラブに目を向けた。サイドにスリットの入ったPVC(ポリ塩化ビニル)のタンクトップ。ジーンズやパンツはワイドレッグとのバランスが気になる。ブランドの顔であるエナメルジャケットは健在だ。これらのアイテムはユニセックスとして男女に向けて展開している。

クレージュ

 イザベル・マランは、とことん90年代。ナイロンのパーカやフリーストップ、マルチカラーのパネルでカラフルに。大理石のような紋様などプリント物も多かった。薄手のパイロット風のように、マランが得意とするつなぎもいくつか。羽根のモチーフをはじめ、ジュエリーはネイティブアメリアン調だった。

イザベル・マラン

 ガラス製のレンズを使ったサングラスで知られるヴェルネだが、そのオリジンはスキーウェアにあった。そんなブランドのウェアライン復活のために白羽の矢がたったのは注目の若手ボラミー・ヴィギエだった。モノトーンをベースにしたスキーウェアはこれまでになかったクールなテイストだ。ジャケットやニットウェアなどデイリー向けのアイテムも。映像はボラミーらしく、ロールプレイングゲームのようなファンタジー調であった。

ヴェルネ

(ライター・益井祐)

〈デジタル〉

 カラーは、アイコニックなネイビーのじゅうたんとミラーで囲まれた空間をモデルが歩く映像を見せた。一人歩いたり走ったりするモデルと、光が反転した瞬間に映る周りにいるたくさんのビジネスマンを対比させた。秋冬も阿部潤一らしいアイテムの解体と再構築で新しいバランスを探るコレクション。ダッフルコートのフロント地ははがれて、中の芯地を露わにし、チルデンセーターは2着分の襟がずれながら重なり合う。カーディガンとテーラードジャケットは複雑に絡み合い一つのアイテムに。完璧に作り込まれた半身と壊れたようなディテールの半身。あらゆるアイテムは作り込まれながら壊され、壊されながらもアイテムとしての新たな調和を探られる。コムデギャルソン以降のファッションにおける一つのテーマでもあるデコンストラクトを、阿部らしいアイテムのチョイスとカラーパレットで展開した。その結果、秋冬はいつになく赤が目立つ。ハットは「キジマタカユキ」との協業で、ブリムの一部をカラーのロゴの形に切り抜いた。

カラー

 ポール・スミスは、シャンデリアが目立つ邸宅での無観客ショーを配信した。秋冬は映画の世界からイメージしたというコレクション。モノクロ映画からカラー映画へと変わっていた30~60年代にかけての映画史から、氷のようなニュートラルカラーから鮮やかなグリーン、ブルー、レッドまでのカラーパレットを揃えた。シグネチャーであるフォトグラフィックプリントは、ビンテージ映画のポスターや古い映画館のインテリアを思わせる質感。銀幕スターたちのスタジオでの顔写真にインスピレーションをえたプリント、サイケデリックなジグザグプリントなど、グラフィカルな柄もいっぱい。

ポール・スミス

(小笠原拓郎)

 ビアンカ・サウンダース 21年のアンダム・ファッション・アーワードのグランプリに輝いた最注目の若手が、ランウェーデビューを果たした。持ち味と言って良いのがテーラーリングやカッティング。コートや中わた入りジャケットの前身頃は一枚仕立てで、ホールドすることであたかも普通のアウターのような印象。

ビアンカ・サウンダース

 レインズ デンマーク発のレインウェアブランドが、新しいロゴ、トレードマークとともにパリに進出した。コーティングポリウレタンを使ったシティー向けのレインウェアからスタートしたが、パファジャケットやフロアレングスのケープなど、アウターウェアがさらに充実した。アクセサリーにも力を入れている。

レインズ

 ソリッド・オム ウーヨン・ミーによるもう一つのブランドが、ミラノからパリへと発表の場を移した。合わせ鏡になっているボックスの中をダンサーが舞う。キルティングのボレロが重なったようなコートや、ビビッドな紫のウオッシュド加工の作業着風セットアップ、クリーンな印象のコンテンポラリーウェアだ。

ソリッド・オム

(益井祐)

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