レディスウェア「アグリス」の鷺森アグリが、クリエイターとのコミュニケーションを通して服を製作する「ディアプロジェクト」を立ち上げ、第1弾としてヨシダナギのためのコレクションを発表した。ヨシダは、アフリカなどの少数民族を自身も民族と同じ格好になって撮影する手法で人気の写真家。ヨシダの作品から着想したカラフルなアイテムも揃うが、核となるのはマキシドレスや細身のマウンテンパーカなど、黒のシリーズだ。3月末から西武渋谷店などで販売する。
〝求愛〟がテーマ
アグリスの前身である「アグリ・サギモリ」時代を含め、「10年以上服を作ってきたが、見えない不特定多数の人に服を作ることがどうしてもしっくりこない。それよりも、スタッフを含めた身近な人や、特定の人が喜ぶ服を作りたいと思っていた」(鷺森)のが、プロジェクトのきっかけ。アフリカの部族を撮影するヨシダに密着したテレビ番組「クレイジージャーニー」を見てヨシダを知り、連絡を取った。アグリスは16~17年秋冬のデビュー以来、〝求愛〟をテーマにしている。このプロジェクトも求愛行動の一つという。
黒はヨシダが好んで着る色。「アフリカに撮影に行くからといって、いかにもバックパッカーという格好をするのは私の中では違う。私にとってアフリカは帰る場所だから、日本で着ている黒い服で帰る。全身黒のファッションは現地では異色で、かえって犯罪などにも巻き込まれにくい」(ヨシダ)という。
日本ではデザイナーブランドの黒い服を愛用しているが、それらは「繊細過ぎたり、実用性が低かったりして、アフリカでの撮影には向かない」。そんな時に、鷺森がヨシダのために服を作りたいと申し出た。
明るい色使いも
長時間の移動でもストレスを感じない肌触り、カメラのバッテリーをたくさんしまえて、防犯性も高いポケット、かがんで用を足しやすいマキシ丈など、ヨシダの要望を詰め込んでデザインした。同時に、Iラインのきれいなシルエットも追求。でき上がったサンプルは、ヨシダがパプアニューギニアに撮影に行った際に実際に着用し、修正した。17年12月には、鷺森とヨシダが共にナミビアに行き、でき上がった服を着て現地の部族と交流した。
一方で、ピンクやオレンジなどの明るい色を使ったアイテム群は、ヨシダが撮影したエチオピアのスリ族や、西アフリカの遊牧民ボロロ族の写真からイメージを広げた。バックに花の刺繍をしたブルゾンや、ジオメトリックな模様のテープ装飾をポイントにしたドレスなどがある。
「(ヨシダに)民族がしているボディーペイントの模様の意味を聞いたら、『意味って何?』と返された。私は意味を考えながら服を作っているが、ファッションの本質は意味がどうこうではなく、単純に着てきれいになれるかどうかだと気付かされた」(鷺森)という。