コルセットやレディスウェアの企画製造、EC運営などのAlyo(アルヨ、東京)の大橋茉莉花社長は、インフルエンサーの「元鈴木さん」としても知られる。大学卒業後、「フーターズ」の店員、アイドル、プロレスライター、イベントコンパニオンなど様々な仕事を経験しながらも、「自分を押し殺して良い子をやってきた」。26歳ごろに良い子を辞め、「ネットで暴れよう」と方向転換。これまでのキャリアの裏話やつらかったことなどを赤裸々に語り、「男性のフォロワーはいなくなった」一方で、女性ファンをつかんだ。その後に誘われて始めたファッションライターの仕事でコルセットと出合い、起業。社長となった今も、「新しい物、新しい時代を作るには品行方正ではいられない。暴れん坊でいたいし、エンターテイナーでいたい」とパワフルさは変わらない。
(壁田知佳子)
記事がきっかけに
大橋社長が書いたコルセットの記事は海外製の安い商品の話だったが、情報が少ない商品ということもあり、記事をきっかけに様々な質問や悩みが届くようになった。「日本製で、痛くない、快適できれいにくびれができるコルセットを作ろう」と16年、起業した。
ブランド名は「エンチャンテッドコルセット」。最初に作った500枚のコルセット「キンバリー」(税込み1万3000円)は、SNSで知った女性が反応し、発売後、約2分で完売した。艶のあるサテン、バックレース、編み上げリボンなどデザインの可愛さに加え、シャープなくびれができる機能、着け心地の良さ、品質の高さが好評だった。バリエーションが増えた今もキンバリーは主力商品の一つだ。最近ではパワーネットを使った、軽い着け心地で丸みのあるボディーラインができる「シレーヌ」が「大ヒットしている」。
起業した時の自前資金は200万円だった。「コルセットを量産するための資金作りとして」、服の仕入れ販売も開始。その後、SNSで女性の服に対する悩みを知り、オリジナルの服を手掛け始めた。作ったのは、「600ミリリットルのペットボトルが入る」巨大ポケット〝マジカルポケット〟付きのスカート。その後、女性らしいエレガントなワンピースを中心にアイテムを広げているが、ほとんどにマジカルポケットが付く。さらに、よく伸びる素材使い、体形を問わずに着られるサイズ感、家庭洗濯可能など、利便性の高い服を次々に生み出している。二の腕をうまく隠す袖のデザインや谷間を見せないパターンも特徴で、バストの大きな女性やふくよかな女性のファンも多い。
自分が欲しいと思って作った服もあるが、「お客様の声を拾って、拾って。さらにその人の一日の生活を想像する。生活する、生きるための服」と大橋社長。服は「シネマティック」のブランド名で展開している。
海外市場にも意欲
販売は自社で運営するECを軸に、年に数回出店している期間限定店。コルセットも服も、販売イベントには「実物を見たい、試着したい」という新規客に加え、顧客も多く集まり、販売スタッフと客との会話も大いに盛り上がる。今夏はバストの大きな女性のためのファッションブランド「オーバーイー」との共同販売イベントも実施した。
コルセット、ウェアに加えてコスメの事業も始めた。今後について聞くと、「海外市場に挑戦したい」と大橋社長は話す。台湾やタイ、中東など美容意識の高い国・地域へコルセットでアプローチしようと考えている。今秋には国内外のバイヤーが集まる美容関連の合同展に初出展する予定で、ゆくゆくは海外の展示会への出展も検討している。「いつかは大好きなジュエリーも手掛けたい」という夢も持つ。