【第19回アジア太平洋小売業者大会から②】野本弘文日本小売業協会会長 人口減・高齢化対策が課題

2019/10/13 06:28 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から②》野本弘文日本小売業協会会長 人口減・高齢化対策が課題

 大会では11カ国・地域の小売業界団体の代表が「カントリーレポート」として、それぞれの小売業の現状と課題を報告した。日本からは野本弘文日本小売業協会会長(東急代表取締役会長)が少子高齢化や人手不足など日本の小売業が抱える課題と今後の小売業のあり方などを語った。

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■宅配網の充実がカギ

 日本の小売業の最大の課題は「人口減少・高齢化」だ。人口減少は消費の減少に直結する。また、高齢化によって単身世帯が増加し、消費行動に大きな変化をもたらしている。

 この問題解決に大きな役割を果たすのが宅配網の充実だ。日本は70年代から宅配の流通網を確立し、今では国土全域にわたるきめ細かいサービスが提供されている。2時間ごとの配達時間指定や即日配達、荷物の追跡サービスなども可能になった。

 食品では単身世帯向けの商品開発も進んでいる。「個食化」「簡便化」に対応したミールキットや、食べ切りサイズの菓子、カット野菜・フルーツなどが充実してきた。また、健康を意識した商品の開発も行われており、人口のボリュームゾーンであるシニア層が満足する新たな商品やサービスをいかに提供するかがカギを握っている。

 人口減・高齢化は労働力確保の観点からも重大な課題。人口減に伴う労働力不足は人材の確保や人件費の増加などに影響している。こうした中で、小売業は「長時間労働」「休日が少ない」といった労働環境を改善しなければならない。(今年4月から施行された)「働き方改革関連法」に基づき、生産性の向上と働き方改革を進めていく必要がある。人手不足を補うため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した機械化などによって、スマート決済、納品自動化、自動棚卸しなどを促進することも重要だ。

報告する野本会長

■業態超え大規模再編

 (人手不足を補う対策として)女性、シニア、外国人の雇用促進も挙げられる。日本の女性就業者数は3000万人を突破し、女性就業率も約70%で、主要先進国の水準に近付いてきた。さらにシニアや外国人労働者の活躍も目立ってきている。

 日本の小売業に必要なことはイノベーションを起こすことだ。これまで、日本では百貨店は百貨店、スーパーはスーパーと、それぞれの業態を守りながらバリューチェーンを構成してきた。今後は業態を守るだけでは発展性がない。日本の小売業界はそれぞれの「業際」がなくなり、業態を超えて大規模な再編が起こっている。業態間の縦割りを改善し、様々な業種や企業の「得意分野」を組み合わせることによって、今までにない新しい商品やサービスを生み出すことが必要だ。

(繊研新聞本紙19年9月20日付)



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