「たびまるアーチ」はアスノスマイル(岐阜県大垣市)が靴下メーカー、西垣靴下(奈良県大和高田市)と共同開発したダウン症児専用靴下だ。ダウン症児に多く見られる外反扁平(へんぺい)足に着目し、足裏のアーチ形成をサポートする機能を持たせた。「ダウン症の支援の輪を広げたい」とアスノスマイル代表で理学療法士の田中寛人さんは語る。
(森田雄也)
30社以上に打診
田中さんの4歳になる長男・維人くんは生後1カ月でダウン症と診断された。ダウン症は、「関節を支える靭帯(じんたい)や関節包が柔らかく、筋緊張が低いといった身体的特徴が多く見られる」と田中さん。そのため、足に体重がのりきってしまい踵(かかと)が内側に倒れ込んで、土踏まずがつぶれてしまう外反扁平足になりやすくなる。
外反扁平足になると歩いた時の衝撃が直接、膝や足の親指に伝わり、痛みが出やすい。足首全体が曲がることで歩きにくくなってしまうケースもあるという。
保険給付の対象となる「下肢装具」や、足のアーチを支える「インソール」など、ダウン症児の足を支える器具もある。ただ、装着感や圧迫感、重さが気になり、嫌がってすぐに外してしまうケースも。実際、維人くんも装具を自分で外したり、歩くのを拒否して座り込んだりしてしまった。
親として何とかしてあげたいという気持ちが強くなったが、国内外を探しても子供の柔らかい足を日常生活の中で支えられる既製品は見つからなかった。「もっと生活になじむ方法はないだろうか」。そう考え、25年9月、子供でもはける高機能靴下の開発を決めた。
全国の靴下メーカー30社以上に電話やメールで共同開発を依頼。しかし「設備がない」「開発実績がない」とほぼすべてに断られた。その中で前向きな返答をくれたのが西垣靴下だった。ウェブで打ち合わせして、西垣靴下の協力を得ながらサンプルを製作。愛知県内で試着会も実施し、改良を重ね、今年2月に100人によるサードサンプルのモニターテストを経て完成したのがダウン症児専用靴下、たびまるアーチだ。

沈み込みを抑制
たびまるアーチは西垣靴下による独自のテーピング編みを採用している。足首の内側から足底面の内側縦アーチにかけて、伸びにくい素材を連続的に採用。内側に張力がかかり、踵の内崩れと、土踏まずの過度な沈み込みを抑制し、足底筋膜や足の指、ふくらはぎの筋肉が動きやすい状態を作り、前方への推進力をサポートする。足裏には滑り止めが付いていて、グリップも効く。13~15センチから始まる4サイズ。
田中さんによると、維人くんは「はいて2、3カ月で走ったり、ジャンプしたりアクティブになった」といい、手応えを感じている。
元々は維人くんのために開発を始めた靴下だったが、モニターの約半数が購入したいと回答。そこでクラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で販売したところ、支援者437人から、総額366万円が集まるなど好反応だった。
8月からはアマゾンで販売を開始した。税込み2000円。商標登録済みで、現在特許を申請中。また、デザインアワードへの応募も進め、製品の認知度向上に努める。
