3連の星マークがアイコンの伊スニーカーブランド「アトランティックスターズ」が、日本でのアピールを強めている。2月上旬にギンザ・シックスの期間限定店で元サッカー日本代表の前園真聖さんらを招いたトークイベントを開催。4月にはイタリア本国の生産工場などを紹介するブランドブックを発行し、顧客や関係者にブランドのストーリーを伝える。
(杉江潤平)
■バリエーション豊か
アトランティックスターズは13年、トスカーナ州フチェッキオでハイブランドの靴製造も手掛ける工場、フィネスト・シューズで誕生した。デザインするのはオーナーの息子、ジャンルカ・ズッケッリさん。80年代に流行したランニングシューズのようなレトロなシルエットと独特のカラーリング、その豊富なバリエーションが特徴のスニーカーだ。商品はすべてイタリアでハンドメイドで作る。
現在、ヨーロッパを中心にセレクトショップや百貨店などで販売している。日本では、イタリアブランド中心の輸入代理業、チンクエステッレ(東京、吉田陽平代表)が独占輸入販売権を持ち、14年秋冬物から扱っている。
セレクトショップや百貨店など約100カ所へ卸すほか、東京・南青山と大阪・心斎橋に設けた路面店で販売している。18年秋冬からは日本別注も始め、40~50代の男性を中心にじわじわとファンを広げてきた。中心価格は3万~5万円。
■マーケティング元年
チンクエステッレでは、20年をマーケティング元年に設定。「スマートスニーカー」(粋なスニーカー)をキーワードに、イタリア発のファクトリーブランドであることを強く訴求する。2月8日に開催したトークイベントでは、プライベートでアトランティックスターズを好んで履いている前園さんとブランド評論家の土井輝彦さん、吉田代表がブランドのルーツや日本への上陸秘話などを語り合った。4月20日には、イタリアの工場などを紹介するブランドブックを発行。購入客や販売員らに提供し、「よりリアルにアトランティックスターズを伝える」(吉田代表)。
販売面では、4月に静岡の御殿場プレミアム・アウトレットに常設店の開設が決まっているほか、百貨店紳士靴売り場での期間限定店を増やす。21年には、販売権を持つアジアへの進出も検討している。
吉田代表は異色の経歴を持つ。高校3年時にサッカーの名門、静岡学園でフォワードとして全国ベスト16に貢献。大学までプロを目指していた。その後、役者の道を歩むも、海外ビジネスに興味を持ち、代理店に就職。10年から駐在していた伊ミラノに残り、14年に現地で開かれていた合同展「ホワイト」で、アトランティックスターズと出合い、取り扱いを決めた。
吉田代表は現在もミラノ在住。そのため、本部とのコミュニケーションが円滑で、21年からは、チンクエステッレがインラインの企画段階から関与できるようになった。「衣・食・空間のライフスタイル全般を対象にしたブランド開発・育成カンパニーとして、ブランドとともに成長していきたい」と話す。
(繊研新聞本紙20年3月9日付)