今年20周年を迎えたバックラッシュ。片山勇代表がデザインする男臭いハードなレザーウェア・グッズブランド「イサムカタヤマ・バックラッシュ」はミュージシャンやバイカーから根強い人気を誇る。3シーズン目となる「ヨウジヤマモト」との協業でハイファッションとしての認知度も高まった。今年1月には国内の染色加工場をグループ企業に加え、妥協しない物作りを追求し続ける。
(大竹清臣)
「ファッションは着る人の気持ちを変える力がある。自分に足りない物を補ってくれる。バックラッシュと一緒に成長してきた今のファンだけでなく、若い世代からも憧れられる存在であり続けたい」と片山代表。子供の頃、バイクの後ろに乗せてくれた父親の背中が〝革ジャン〟への原点だと話す。
学生時代にはロックに目覚め、英国のバンド、クラッシュのジョーストラマーに憧れる。大人の男性としてショーケン(萩原健一)や高倉健、矢沢永吉らの革ジャン姿にしびれた。夏でも革ジャンでカスタムした大型バイクに乗るのが片山代表のスタイルだ。
■足りないものを補う
バックラッシュは製品染めした革で経年変化が楽しめ、長く愛用できるレザーウェア・バッグ、シューズを提案する。牛革のダブルショルダーなど着込むほど体になじむライダーズジャケットが代表的なアイテム。「自分が死んでも、何十年経っても残る、永遠の定番を作るのが理想。そのためにはトライ&エラーも必要で長くやり続けなければならない」と話す。
先日の20年春夏向け展示会ではフランスのショルダーを使ったライダーズジャケットを全スタッフが着用し新定番に育てる試みが始まっている。ヨウジヤマモトとの協業でもレザーに特化し、流行に左右されない自分の好きなスタイルで挑戦し続ける。
「ブランドを継続するためには物作りの現場は欠かせない。運命共同体のチーム」との強い思いから国内の染色・加工場の事業を譲り受けた。国内で革製品を作る場が減少する中、「日本製の価値をもっと高めたい。そのためにも自社の物作りを担ってもらうのはもちろん、他社のブランドにも求められる存在にならなければならない」と若い職人たちとともに未来を切り開くための努力を重ねる。
■愛の強いパートナーと
オンリーショップは東京・代官山の直営店のほか、フランチャイズ形式で札幌、大阪、富山、福岡に構える。「EC全盛の時代だから逆に、どこで誰から買うかが重要。ブランドへの愛が強いパートナーに恵まれており、こだわりの空間と接客力が強みとなる」。国内の主要な卸し先である「ビーセカンド」や「ロイヤルフラッシュ」を運営する上野商会とは長年にわたり、深く濃く取り組んでいる。
海外販路の開拓も早く、ブランド立ち上げ数年後でパリとミラノに進出。合同展示会の継続出展、ショールームとの契約などで卸し先を広げた。現在は中国との太いパイプ作りに尽力する。昨年5月、中国・北京にフランチャイズでショップをオープンした。郊外の別荘エリアの倉庫のようなショップはクローズドな空間。商品もケースの中に収納されているので、スタッフにお願いしないと見られない。隣がハーレーダビッドソンのショップで富裕層しか来店しない。
20周年を記念し、8日には東京・恵比寿でファッションショーとブランドにゆかりのあるミュージシャンらによるライブも開催する。「生涯現役で革ジャンを着続けるかっこいいオヤジでありたい」。片山代表はこれからも革の世界と真摯(しんし)に向き合う。