綿織物の播州産地で、繊維機械の開発が進んでいる。取り組むのは、繊維工業技術支援センター、産元商社の桑村繊維、繊維機械販売の片山商店、神戸大学など産官学の面々だ。ものづくり日本大賞受賞や、海外メーカーへの採用など、各々のノウハウを生かした開発に注目が集まる。
繊維機械学会14年度技術賞に、スワイベル機という聞きなれない織機開発が選ばれた。受賞者は繊維工業技術支援センター。ジャカード織りの一種であるスワイベル織りは、地の生地を織るシャトルとは別に、小型のシャトルが部分的に動いて、織布と同時に刺繍模様を作り出す。優れた意匠性が特徴だが、生産に時間がかかるため稼働する機械はなくなっていた。
復活したスワイベル織機は、津田駒工業のエアジェット織機に、自動制御可能な刺繍用シャトルを付けた。生産性を従来比6倍に向上させたほか、刺繍部分を洋服の縫い合わせとして活用した「無縫製織物ドレスの製造」も目指した。産業活用には改善点も多いというが、失われた技術を復活させ、機能をアップデートした点が評価された。
産地発の機械は、海外にも広がる。余り糸の再利用というエコな発想から生まれたのが、最高18色を1本につなぎ糸を作る「アレンジワインダー」だ。番手や素材の違う糸が出来るため、経糸の交換なしに色柄の違う織物が織れる。納期短縮や製造コスト削減、環境性が評価され、第1回ものづくり日本大賞総理大臣賞を受賞。ポルトガルやブラジルなど海外に100台以上採用された。
古谷稔同センター所長は「産官学は、各々のノウハウが生きており発見も多い。今後も新しい発想で、繊維機械の開発に取組みたい」と語る。2月の播州織総合素材展では、片山象三西脇市長が、産地活性化に向けて「西脇ファッション都市構想」を発表した。行政の後押しという追い風が吹くなか、今後も播州産地で産官学の連携が加速しそうだ。