国内繊維産地の技術や感性の継承を目指す「ブルールームプロジェクト」が、テキスタイル開発に力を入れている。製品化にも取り組んでおり、遠州・浜松の技術を結集したチノパンツ「ハマチノ」などを開発した。
同プロジェクトには、播州の播や尾州の御幸毛織、遠州の成和第一産業といった産地企業が参加している。提案する生地はセルビッジデニムやウールツイードといった短繊維織物が多いが、合繊織物でも北陸の産地企業と協働して経年変化する織物を開発した。
ニットも和歌山産地と協業したつり裏毛など、ビンテージ感のある素材のバリエーションを広げている。
この間、テキスタイルの展示会にも参加しており、世界に向けての発信を強めている。海外ブランドからも量産のオーダーが入るなど、品質の良さが認められている。
最終製品の打ち出しも強化している。ハマチノに用いた生地は、綿織物産地の浜松に古くからある豊田自動織機のシャトル織機「GL-9」で織り、仕上げまで浜松で一貫生産したもの。60~70年代に生産されたオフィサーズチノを参考にして、赤耳仕様にしたほか、糸使いや組織を工夫し、経年変化も楽しめる生地に仕上げた。
ファスナーには三重県名張市の朝日ファスナーのビンテージファスナー「ウォルデス」を採用。ボタンも綾ユリアボタン工業のユリア樹脂ボタンを使うなど、細部にもこだわった。
同プロジェクトのクリエイティブディレクターを務める野田仁さんは、「使い捨てのサイクルではなく、長く着て変化を楽しめるような服や生地を作っていきたい。そうした服が増えれば国内の技術の継承にもつながるのでは」と今後の広がりに期待する。