《私のビジネス日記帳》輸出の基盤はブランディング エイガールズ社長 山下智広

2025/10/15 06:25 更新NEW!


 僕たちは丸編み産地、和歌山県・紀三井寺のテキスタイルメーカーです。売上高の半分以上を占める海外向けは、04年に初出展した国際素材見本市プルミエール・ヴィジョン(PV)パリに始まります。当時、僕は営業でした。その頃を思い返すと、自社の強みを磨き上げ、それを言葉とストーリーで発信する力が国際競争力の源であり、まさにブランディングが輸出の基盤だと改めて感じます。

 PVパリに初参加した時、初日から多くのお客さんに来ていただきました。欧州で僕たちが得意とする天然繊維を売るのは、本場に勝負を挑むようなもの。日本は合繊の印象が圧倒的で、天然繊維で何が作れるのかあまり知られていませんでした。でも、ガーゼ調やトランスペアレントな生地が面白さで非常に評価され、ラグジュアリーな「ティッシュウェイトファブリック」と称していただきました。

 盛況でしたが、帰国して冷静に分析した時、自分たちの強みが何かはっきりしておらず、芯がない状態だったと気づきました。お客さんの中に、エイガールズの印象が残っていなかったのです。そこで、当時デザイナーだった尾崎(孝夫クリエイティブディレクター)とコア商品を作ろうと打ち出したのがスビン綿「ロータス」。今では自社の代表素材の一つです。他にも色々なファブリックブランドを作りました。欧米ブランドはそれらの名前を商品タグに付けてくれています。素材が企業の象徴となっている点を、非常に誇らしく感じています。

(エイガールズ社長 山下智広)

 「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。

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