22年春夏パリ・メンズコレクション 日本テーマに=カサブランカ

2021/07/05 11:00 更新


カサブランカ

 マサオさん--「カサブランカ」22年春夏のテーマとなったのは日本人の友人であった。これまでの来日は25回以上、大の親日家であるシャラフ・タジェルはうれしそうに日本をインスピレーションにしたコレクションについて語る。カサブランカといえばシルクのプリントシャツだ。新宿のビル群のように並ぶ日本食、その背中にはパンケーキに見立てた雲から富士山にシロップが垂れ落ちる。民族衣装に身を包んだ女性の後ろには首里城が鎮座、花が咲き誇るハイビスカスの花が沖縄への旅を思い起こさせる。

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 テーマとなったマサオさんの姿もグラフィックとして落とし込まれた。毎シーズン、スポーツをテーマの一つに取り入れているが、今回は卓球だ。オタク感をレトロ調のスポーツウェアやボールが飛び交うようなイメージのモノグラムで表現した。コレクションのもう一つの軸となったのはメンフィスデザインで、ポップなカラーパレットや波打つようなフォルムが絵柄だけでなく、ジャケットのラペルやベルトに見受けられた。アクセサリーにも力を入れ、初めてオリジナルのレザーシューズを作り、バッグ同様にバンブーで装飾した。またジュエリーも初登場で富士山に日が登るようなデザインが印象的だった。

 富士山といえば、ジャケットの背中に富士山を望む一軒の家が描かれていたがシャラフの夢の一つで、将来そんな家を日本に立てたいと語る。コレクションを通してカサブランカのはじめの4文字「CASA」を何げなく使っていたが、偶然にもカーサ(家)とも読めた。彼にとって日本は第二のホームなのだ。新型コロナの影響で来日できない現在、「早く帰りたい」という。

 そんな日本愛をどのように捉えるか。昨今ファッションをはじめ、至るところで「カルチャー・アプロプリエーション」(文化の盗用)を耳にする。もちろん、外国人が考えたデザインなどには誇張されているものもあった。でもこれは外国人だからこそ描ける、外から見た日本の姿ではないのか? 文化が交わり新しい文化を生むことで人間は歴史を重ねてきた。二言目にはカルチャー・アプロプリエーションや「キャンセリング・カルチャー」。線引きの難しい問題ではあるが、ファッションも人間社会も他人や他文化を拒絶し発展性のない状況に陥っているように感じる。

(ライター・益井祐)

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