【パリ=松井孝予通信員】欧州委員会は、仏ケリング傘下の「グッチ」、リシュモン(スイス)傘下の「クロエ」、仏LVMH傘下の「ロエベ」の3ブランドに対し、独立小売業者の価格設定を制限したとして、総額約1億5700万ユーロの制裁金を科した。対象はいずれも欧州を代表するラグジュアリーグループで、判断の背景には競争政策の厳格化がうかがえる。
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3社は15年以降、小売業者に「推奨価格」を実質的に固定価格として順守させ、割引率やセール期間を制限。一部ではオンライン販売を禁じるなど、価格競争を阻害していた。欧州委員会は「消費者が公正な価格競争の恩恵を受ける権利を奪った」とし、罰金を科した。制裁額はグッチが1億1970万ユーロ、クロエが1970万ユーロ、ロエベが1800万ユーロ。
欧州委員会は23年4月の抜き打ち査察を機に調査を進め、各社はいずれも事実を認め、協力手続きに応じたことで罰金は軽減された。ケリングは「問題の慣行はすでに終了しており、罰金は上期決算で引当済み」と説明。LVMHは「欧州委員会との和解に至った」とし、リシュモンも「是正措置を講じた」と表明した。
欧州委員会のテレサ・リベラ副委員長は「すべての消費者が、どこで何を買う場合も公正な競争を享受すべき」と述べたうえで、「今回の決定はモード産業に強いシグナルを送るもの」と強調。価格管理が常態化しやすい高級ブランドにも競争法を厳格に適用する姿勢を示した。