【パリ=松井孝予通信員】フランス上院でファストファッション規制法案の審議が始まった。EC大手「シーイン」を念頭に置いた対策とみられるが、環境負荷軽減に加え、国内産業の競争力維持も狙いとされる。
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争点は「ファストファッション」の線引きだ。経済財政省は、二つの基準を提示する。第一に扱う製品ラインの幅も踏まえた商品数。第二に「修理の奨励」で、製品価格と修理コストの比率から判断される。販売価格が安いほど修理される可能性が低く、ファストファッションと見なされやすい。
欧州大手「ザラ」は年間20コレクション、「H&M」も頻繁に新作を投入。国内量販チェーンも例外ではない。仏業界団体は、年1万6000品番以上の投入という高い基準を提案し、対象をシーインや「テム」に絞ろうとしている。
政府は、過剰なモデル数を持つ業態を絞る方針だが、企業の名指しは避けている。米国による対中関税や小口便優遇の廃止を受け、シーインが欧州市場に軸足を移してきた背景がある。シーイン側のロビー活動も指摘され、立法過程への影響が懸念されている。
環境負担金(マラス)は、25年に製品1点当たり5ユーロ、30年に10ユーロを課す方針だが、金額は法案本文に明記されず、政令で調整されることになった。法案は当初、広告禁止や環境負担金の導入を盛り込んでいたが、上院審議前に大幅に修正され、実効性を疑問視する声もある。
フランスのファストファッション規制がグローバル市場でのルール形成に向けた一石となるか。実効性が問われる。